2020年。人と会うことそのものが制限され、昨日までの「当たり前」が、次々と失われていった。
そのただ中で、西東京青年会議所の理事長を務めていたのが、株式会社YAGASAKI REAL ESTATE代表取締役で矢ヶ崎ぶどう園の矢ヶ崎泰幸さんだ。
「やる」と言っても批判され、「やらない」と言っても批判される――。
誰も正解を持たない時代の中で、判断を下し続けなければならなかった一年。
それでも矢ヶ崎さんは、「自分の意思で決めること」をやめなかった。
苦しみの中で見えた、人の本音、仲間との距離感、そしてテクノロジーの可能性とは――。
“普通じゃない365日”を駆け抜けた、一人のリーダーの記録。
矢ヶ崎さんのお話は↓ここからお聞きいただけます(約15分15秒)
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「マスクをつけてください」から始まった違和感
矢ヶ崎泰幸さんは、不動産会社「YAGASAKI REAL ESTATE」の代表取締役を務める傍ら、矢ヶ崎ぶどう園で働き、FM西東京のパーソナリティとしても活動している。
2020年当時は、自ら会社を立ち上げたばかり。さらに、西東京青年会議所の理事長という大役も担っていた。
「ちょうど2020年の2月頃ですね。青年会議所の関係で金沢に行っていたんですけれども、その頃から会場に入る時に『マスクをつけてください』って言われ始めて、“世の中の様子が変わってきたな”って感じました」
まだコロナ禍の全貌が見えていなかった頃。
しかし、その空気の変化は確実に始まっていた。
「やっても批判、やらなくても批判」だった一年
青年会議所は、本来「何かをやっていく団体」だ。
だがコロナ禍では、「人と会うな」という社会的要請と、「それでも活動したい」という思いの狭間で、判断を迫られ続けた。
「全部中止しますって言うと、“なんでやらないんだ”って言われるし、“やれる方法もあるだろう”って言われる。逆に何かやろうとしても、“そんなことやる必要あるのか”ってなる。何をやってもハレーションだったんですよね」
会議はZoomへ移行。
しかし、“直接会ってこそ意味がある”という価値観との衝突もあった。
「自分的には“もう全部Zoomでいいんじゃない”ってもともと思う派だったんです。でも理解が得られないことも多かったですね」
行政は「会わないでください」と言う。
けれど、人は会いたい。
その矛盾の中で、最終的に責任を負うのはリーダーだった。
「敵を作っても、自分で決める」しかなかった
コロナ禍では、状況も、人の考えも、日々変わっていった。
「“やっぱりOK”“やっぱりダメ”が本当に多かったんです。いろんな人がいろんなことを言う。それを全部まとめるなんて無理なんですよね」
だからこそ必要だったのは、“自分で決める覚悟”だった。
「みんなそうやって言うけど、僕はこうやるからって。敵を作ったとしても、自分の意思で決めて進める。その強さは、これからまた何かあった時に絶対生きると思います」
その経験は、現在の会社経営にもつながっているという。
だが同時に、その一年は壮絶でもあった。
「最後、涙が出ましたからね。終わる時。普通じゃない365日を過ごしたなって。メンタル的には厳しかったです」
それでも“できたこと”は確かにあった
顔を合わせることが難しい時代。
それでも、青年会議所として“できたこと”もあった。
特に印象に残っているのが、田無神社をブルーにライトアップした取り組みだ。
「エッセンシャルワーカーの皆さんのことを思いながら、いつもの赤じゃなくて青にしたんです」
さらに2020年12月には、向台グラウンドで野球教室も開催。
清原和博さん、立浪和義さん、デーブ大久保さんらを招き、感染対策を徹底した上で実施した。
「雨も降っていて、ぐちょぐちょで寒かったんですけど、すごく思い出に残っています」
“できない”ことばかりが続いた年。
それでも、“できた”記憶は、確かに残っている。
コロナで見えた「人間の弱さ」と「本音」
矢ヶ崎さんが特に強く感じたのは、“感染した人への空気”だった。
「コロナに感染したこと自体が“悪”みたいな扱いだったんですよね。責任者が感染したとかなると、すごく悪く見られてしまう」
好きで感染したわけではない。
それでも、人々は恐れ、不安をぶつけ合った。
「メディアも、もっと“優しくしてあげましょう”って言ってもよかったんじゃないかなって思います」
また、組織を率いる中で、“全員とは分かり合えない”という現実も見えた。
「100人いたら、100人全員が友達にはなれない。それもよく分かりました。緊急事態って、人を普通じゃなくさせるんだなって思いましたね」
Zoom時代が一気に来た――「もっと早く活用されてもよかった」
一方で、コロナ禍はテクノロジーを一気に前進させた。
「Zoom飲み会、面白かったですよ。家でそのまま酔っ払って寝られるし(笑)」
リモートでのゲームや交流も数多く体験した。
「人狼ゲームやったり、クイズで負けた人は一回退出とか。制約の中でどう楽しむかっていうのは、すごく面白かったですね」
そもそも矢ヶ崎さん自身、Skypeの時代からオンライン通話に慣れていたという。
「2000年代前半から、そういうツールってあったんですよ。動画も送れたし、無料で使えた。それを2020年まであまり活用していなかったのは、もったいなかったですよね」
コロナ禍は、“新しい技術”を生んだというより、“すでにあった可能性”を社会に広げた出来事でもあった。
「安心していいんだよ」と、あの頃の自分に伝えたい
インタビューの最後。
「2020年の自分に声をかけるとしたら?」という問いに、矢ヶ崎さんはしばらく考え込んだ。
「すごくじーんとくる質問ですね」
そして、静かに言葉を続けた。
「自分を信じて動いた方がいいよって言いたいです。敵を作っても、自分を信じてそのまま行けばいいからって」
さらにこう続けた。
「優しく対応してくれる人だけでいいからと。でも、そこに付け込む人もいるから気をつけろよって」
そして最後に漏れたのは、深い実感のこもった一言だった。
「三日三晩、一緒にいてあげたいぐらいです。『安心していいんだよ』って言ってあげたいです」
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