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あんどうりすの防災四季だより 20年8月9日「特別養護老人ホームにおける、水害からの避難」

あんどうりすの防災四季だより

近年、大地震や豪雨水害の発生が相次ぐなか、市民にとっても「防災・減災」は非常に身近な話題となっています。以前と比べ、防災の知識に触れることが増えていますが、わたしたちは覚えた知識をマニュアル化してはいないでしょうか?
この番組では、四季に合わせた「防災・減災」のトピックをあらゆる視点で紹介します。
パーソナリティーを務めるのはアウトドア防災ガイドのあんどうりすさん。
アウトドアで出会ったスキルを楽しくわかりやすく話してくださいます。

アウトドアって大変そう…防災って難しそう…そんなことないんです。
気がついたら防災の知識が身についていた!そんな時間になるはずです。

 

 

第71回となった今回のテーマは

特別養護老人ホームにおける、水害からの避難

先月の「令和2年7月豪雨」では熊本県の特別養護老人ホームの入所者が逃げ遅れて、命を落とすということがありました。

2016年の台風被害では岩手県岩泉町で高齢者向けグループホームでも犠牲者が出ています。

なぜ被害は繰り返されてしまったのか。
またこのような被害を繰り返さないために、施行が進められる都市計画法の改正についても説明しています。

番組後半では、2018年の西日本豪雨で甚大な被害があった岡山県倉敷市真備町にある小規模多機能ホームぶどうの家まびの取り組みもご紹介します。

詳しくはラジオライブラリーでお聞きください。


 

放送の文字起こしを、記事と同じページに掲載しています。
音声をお聞きいただきながら、文字で情報やデータをご確認ください。

   

 

放送音源

   

 

 

文字情報

 

 

水防法の改正

今週は、特別養護老人ホームにおける、水害からの避難についてお話ししたいと思っています。


先月、熊本県を中心とした九州地方、ほか日本各地で大きな被害が出た
令和2年7月豪雨」がありました。(令和2年7月豪雨について内閣府資料
その際、熊本県球磨村の特養ホームで、14名の入所者が逃げ遅れて、亡くなったというニュースがありました。皆さんの記憶にも新しいことと思います。


少し前の話です。
国は2015年に水防法というものを改正しました。

水防法とは 洪水又は高潮に際し,水災を警戒し,防ぎょし,及びこれに因る被害を軽減し、もって公共の安全を保持することを目的とする。 (水防法第一条)

国土交通省HP 水防法とは


この中でハザードマップの浸水想定区域について、想定し得る最大規模の洪水のハザードマップを作りましょうという動きがあったんです。

その翌年の2016年には、岩手県岩泉町の高齢者向けグループホームで9名の入所者が逃げ遅れて亡くなっているということもありました。

これを踏まえ、ただハザードマップを最大争点にするだけじゃなく、こういった特養ホームなどが含まれる、要配慮者利用施設の避難確保計画を義務付けるよう、水防法が改正されました。2017年のことでした。

国土交通省資料: 要配慮者利用施設の管理者等の 避難確保計画の作成等の義務化についてpdf

 

 

球磨村の特別養護老人ホームではなぜ

先月の7月豪雨で被害にあった球磨村の特養ホームでは、最初の報道によると、しっかりとハザードマップに従って避難訓練をしていたという話でした。


ところが、その後よく調べてみたところ、
避難計画にある浸水区域図の想定を「1000年に一度の雨」という最大想定にしていなく、「80年に1度の雨」という想定の浸水区域図をもとに、避難訓練していたということがわかりました。

国土交通省九州地方整備局は17年3月、熊本県人吉市より上流で12時間総雨量502ミリの「1000年に1度」の雨が降った場合、千寿園周辺は広範囲に10~20メートル未満浸水するとの浸水区域図を公表した。同時に九地整は12時間262ミリの「80年に1度」の浸水区域図も公表。この場合、園自体は浸水せず、周辺の浸水も0・5メートル未満とされており、園はこのケースを考慮した避難計画を策定し、村に提出していた。

引用:毎日新聞 7月28日配信記事

何故そうなったのか、まだ未解明の部分があるんですが、1000年に1度の雨という最大想定だと浸水予想は10 m から20 m とされていました。80年に1度の場合の浸水予想は0.5 m未満だったので随分違いますよね。

報道によると、施設内では、一階にテーブルで「島」を作り、その上に避難していた方もいらっしゃったそうです。そんななか、二階に上がる階段から先に水が来て、浸水してきた状況なので、逃げ場がなくなってしまったということでした。


 

浸水区域に特別養護老人ホームが建つ理由

実際に、最大規模を想定したハザードマップを見ると、浸水区域にある特養ホームがとても多いと言われています。

原因の一つとしてそういった川沿いの土地は、広く余っていて、安く売られているというケースがあるので、特養ホームが多く建っているのではないかと指摘されています。

そのため、災害危険区域での社会福祉施設の開発を原則禁止にする
という内容が含まれた都市計画法の改正案が今年6月に成立し、2年以内に施行されると言われています。

国土交通省資料: 防災・減災等のための都市計画法・都市再生特別措置法等 の改正内容(案)についてpdf

倉敷市真備町でのケース

もちろん、既存の建物はどうするかということなんですけれども。
高台に移転しやすい所は大丈夫ですよね。

とはいえ、すぐに移転できるわけではありません。
地域のコミュニティが最も必要となる高齢者が、今まで暮らしてきた地域コミュニティから離れてしまうのは心配…という声もあります。
ですので、水害が想定されている区域に居続けながら、身を守る方法の一つとして、岡山県倉敷市真備町の「ぶどうの家まび」の取り組みをご紹介します。
以前の放送でもご紹介したことがありますよね。

ここでは、2018年の西日本豪雨で地域一帯が浸水し、賃貸住宅が被災したそのままの誰も住んでない状態になっていました。

そこを高齢者や障がい者といった地域のサポートを必要とする方々の住宅にしつつ、水害で浸水を免れていた二階を避難場所にするという、小規模な高齢者施設を建設しました。これが「ぶどうの家まび」です。
小規模多機能ホームぶどうの家まびHP

これは国土交通省の事業や、「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」にも採択されました。

巨大なスロープ

この計画で特徴的なのは、その2階まで階段ではなく、巨大なスロープを作ってるんですね。

外から中にかけて、3 mの高さを30mの長さのスロープが上がっていく。

角度にすると1/10って言われるんですけれども、10 mの長さに対して1m 上がっていくという角度ですね。

高さ3 mに対して30mの長さをかけて上がるという非常にゆるい角度です。
車椅子を押しても2階にたどり着けるくらい。そのような長いスロープを建物の外側に作りました。

これなら地域の方々が避難することもできますし、そこに住んでいる人たちも、そのスロープさえ使えば、介助する方がひとりでもいればスムーズに避難できるという設備です。

 

移転するよりも現実的な価格で

車椅子の方を抱っこやおんぶするというのはやはり重さもあるのでなかなか大変です。
職員の数が足りない場合もあります。

なのでこのスロープはいいよねという話なんですけれども。
費用はいくらぐらいするのかという質問がよくあります。
500万円ほどかかったそうです。
ですが、クラウドファンディングで 200万円募集したところ、それを超える330万ほどが集まったんだそうです。
残りの金額は事業の助成金で補うことができています。

災害危険区域にあるからと、建物を移転するよりもずっと現実的な価格でできますので、各地で検討していただければと思ってます。ぶどうの家では視察も増えているそうです。


令和2年7月豪雨により球磨村で被災した事業所は残念ながら事業再開断念というニュースが流れています。

地域で特養ホームがなくなると、職員の雇用も失われるのでダメージは大きいですよね。


車椅子でも上がれるスロープが、みんなのお金で500万円ぐらいで作れたという事例が希望になるかなと思っています。

 

 

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今回は、「 特別養護老人ホームにおける、水害からの避難 」ということについてお伝えいたしました。

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