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故人の遺志について 2025年2月15日・22日(土)放送分

まつばらホームクリニック『ラジオ在宅NOW』!

この番組は、保谷駅から徒歩三分の場所に位置する、まつばらホームクリニックの松原清二院長に、日頃医療の現場で感じていらっしゃることをお話頂き、皆様にも在宅医療に対しての理解をより深めて頂ければと思います。

第一週と第三週に本放送、その他の週は再放送をお送りします!

【2月のテーマ】
『故人の遺志について』

皆様是非お聴きください!!

田中ヒロコ:では本日もどうぞよろしくお願いいたします。

松原先生:自分の仕事で、患者さんの意向をよく聴きながら診療に携わっていって、ただその後の故人の意思って何を引きずってるのかなっていうのがあって、例えば、夫婦間がすごく仲が良くて旦那さんが病気で亡くなった後の奥さんの立ち直れない感じとか。そういった時って、勝手に僕頭の中で、「あいつ、ちょっとよろしくな。先生」っていうか頭に勝手に聞こえるというか・・・

田中ヒロコ:看取りまで見届けて、そういうふうな感覚ってあるんですね。

松原先生:あるんですよね。勝手にその亡くなった方の患者さんの故人の意志を自分の中で勝手に解釈しちゃって思っちゃってるだけかもしれないんですけど。でもあの人大丈夫かな?とかご飯食べれるかな?寝れてるかな?って気になっちゃって・・・だから場合によって外来に来てもらって、しばらく様子を見るってことはしています。

田中ヒロコ:それは先生のほうからお声がけしてって感じなんですか。在宅医療としてそれで終わりじゃない。診ていた方が亡くなったからといってそこで終わってるわけではないっていうことなんですね。

松原先生:すごい重要なんじゃないですかね。結局愛するべき人を亡くした後の喪失感って尋常じゃないですからね。だからやっぱりそこに医者としてより添えることとしては、大変な時期を一緒に家族と共有したあとは、時間の経過とともにそういった気持ちが薄らいでいくと思うんですけど、共有したことをお互いに認識して、やがては時間が解決していって、やがては外来から「大丈夫です」って言われて去っていくっていうのが一番いい。

田中ヒロコ:とてもすごい素敵なことですね。なかなか在宅医療でしかも松原先生じゃないとできないんじゃないかっていう感じがしますよ。「亡くなりました。はい、終わり」みたいな。私も父に亡くした時もそうですけど、残された家族ぽっかり空いちゃうことって、先生がそこまで寄り添ってくれるっていうのは思わなかったですね。

松原先生:ただ前提があって、やっぱりご家族の介護の時間がちょっと長すぎちゃって、病院にも行けないから、僕がしばらくあなたの面倒見ますよって形でやってて、患者さんが亡くなった後にどうしますか?その時にご飯を食べれないし眠れないってなったらしばらく外来に来る?っていう話になって、外来に来てもらってお元気になったら元々かかってた病院の方に、こういうのって「グリーフケア」っていうのですけど、グリーフケアも終了しましたので、そちらの方で引き続きお願いします。って形でお願いします。

田中ヒロコ:グリーフケアっていうのは、残された方のケアをすることをグリーフケアっていうんですね。

松原先生:やっぱり、人によってはうつ病になったりね。やっぱりそういうふうになっちゃうと人生が大変になっちゃうから。うつ病になりきらないよ。やっぱり関わることが大切。

田中ヒロコ:それはもう患者さんとしても残された家族、どんな気持ちで旅立たれることを思うと、すごくありがたいですよね。それで先生に診てもらって良かったって思ってらっしゃるのかなってすごく感じましたね。

松原先生:外来でそういった患者さんに接すると、外来終了2、3回前くらいから「もう私大丈夫」とご自身の口でおっしゃる方が多いんです。「大丈夫?」って言うと「大丈夫」ご飯食べれてる?「大丈夫」「息子がたまに来て面倒を見てくれてる。大丈夫」ていうふうに社会的なセーフティーネットとかも確認しながら、じゃあ次は最寄りの診療所を探してきて。お手紙書くから。「わかった」って行くわけ。

田中ヒロコ:それで本当にご家族もちゃんとケアして終了してるって。

松原先生:そういう方が多いかっていうと年間1人いるかいないか?ですけど、やっぱりちょっと見てて不安だなって人は関わった方がいいかなっていうふうに思って関わってます。

田中ヒロコ:介護にどっぷりつかって・・・なんだろう・・やっぱり介護をした者じゃないとわからないっていう動詞的な感覚みたいな。情報としたら耳に入ってくるけど、自分の身に振りかからないとわかってもらえないんじゃないか?とかきっとわかってもらえないだろうとか。でも実際分かってもらえないっていうところもあるだろうし。そういった意味では先生と一緒に歩んできたっていうところが強いんでしょうね。

松原先生:そこがやっぱり個別的だからね。ちゃんと向き合って話をしてその人の性格も分かり、亡くなった人に対する愛情も分かり、そういうのも全部包括的に接することがグリーフケアでは大切。

田中ヒロコ:グリーフケアっていうのは、今日初めて知ったんですけど、知らなかったし、そういうものがあるんだっていうのが分かったらすごく家族も安心して先生に相談できるなって。やっぱり抱え込んじゃうじゃないですか。「虚無感」みたいな・・・

松原先生:在宅医療とか、人の終末期っていろんな人がとにかく出入りし始めるから環境も結構忙しいんですよね。そういう人たちがいなくなっちゃうから。さらに虚無感も落差で感じやすいからね。

田中ヒロコ:そうですよね。頑張ってきたときにぽっかり開いてしまってっていう感じになって、そういうケアって在宅ならではでやっていただける感じですか?

松原先生:先生の性格もあるんだろうけどね。訪問看護ステーションとかでもそういったのに興味があるところとかもあったり、外来でも遺族外来っていうのも受けているところがあったりする。今やってるかわかんないけど、埼玉医大の精神科の先生がおやりになられてたと思うんですけどね。

田中ヒロコ:そうなんですね。自分たちもどの先生に出会うかってやっぱり重要になってくるんだなって思います。先生はいつもお話伺ってるとご自宅に行くから家族との会話もあるし全体とか家族構成とかもすごくしっかりと見てらっしゃるじゃないですか。一方で患者さんの病気だけ見ればいいっていうタイプの先生もいらっしゃると思うので、自分で選択してくってすごく大切なことなんですね。改めて思いました。

松原先生:相性もあるだろうね。お互い人と人だからね。この先生だと話しやすいとか、この先生だと安心するとか。あると思うんだよね。例えば僕とか生活のこととか見ちゃうけど、ひろこさんがおっしゃってた病態生理と投薬と治療のことを単々と喋ってくれる先生がいいっていう人もいるかもしれないし。それはそれぞれなのかな。逆にウエットなのがそんなに好きじゃないって人もいるかもしれないけど、ただ僕がやっぱりもともと在宅好きなのは人間的な関わりが病院よりあるから好きだっていうところがあるからね。

田中ヒロコ:患者さんの故人の声が聞こえてくるっておっしゃってた時に「へぇー」って思ったんですよ。聞こえてくるんですか?

松原先生:今ね、例えば旦那さん亡くして奥さんを診に行っている人もいるんだけどやっぱり正月迎えると、必ず線香1本上げてるとき、その患者さんの声がなんとなく聞こえるんですよ。この前も、「先生、あいつよろしくな。」って・・・そういうのが聞こえたりするんでね。だから「頑張ります!」みたいな・・・

田中ヒロコ:旅立たれた後も繋がってるっていうことですよね。

松原先生:だから故人の意思って、ヒロコさんはお墓つくるときに希望はわからなかった。話もできていないというふうにおっしゃってたけれども、基本はずっと今まで積み重ねてきたコミュニケーションの中から、この人だったらこういうことを言うだろうなとか、そういうのを推測しながら、勝手に自分の中で作っているだけかもしれないんですけど、それで残された人に対して前向きに接するというのが自分としては残された人たちとしてはいいんじゃないかなというふうに思います。