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PGT-A検査(着床前検査)で妊娠率がアップする?検査について詳しく知りたい方へ

こんにちは!いつも妊活ラジオをお聴きいただきましてありがとうございます。

アイジェノミクスが行っている着床前検査(PGT-A検査)について今回はご紹介します。

PGT-A検査について

PGT-A検査で妊娠率が向上すると言われるのはなぜなのだろう? 

PGT-A検査を検討するにあたり、正しい知識を身に付けたい。 

そんな方に読んでいただきたい記事です! 

着床前診断の検査3種類、PGT-A・PGT-SR・PGT-Mとは? 

https://ameblo.jp/igenomix-japan/entry-12725039014.html

染色体の数を見分ける、PGT-A検査 

PGT-A(Preimplantation genetic testing for aneuploidy:着床前胚染色体異数性検査)とは体外受精によって得た胚の染色体の数を、移植を行う前に調べる検査です。 

欧米諸国では流産を防ぐ目的で実施されていました。国の社会的背景や医療制度よって検査を実施する基準や対象は異なっています。 

一方、日本ではPGT-A検査が命の選別であるとの社会的意見もあることや、以前の検査法では診断の精度が乏しかったことなどの理由により日本産婦人科学会は実施を認めていませんでした。 

しかし、近年の検査技術の進歩や社会の中での意見の変化を受け、日本産婦人科学会主導のもとPGT-A検査の有用性を確認する臨床試験が行われています。

 

そもそも染色体ってなに? 

染色体とは細胞の核にあるDNA(遺伝情報の塊)の集合体です。 

親から子に受け継がれる遺伝子情報が納められ、常染色体と性染色体からなります。 

染色体は生物によって数が異なり、人間の染色体の数は46本です。 

父親の精子と母親の卵子からそれぞれ23本ずつを受け継いで、受精卵(胚)が有する染色体46本(23対)は、常染色体が44本(22対)、性染色体が2本(1対)となっています。 

胚が有する染色体の数は常に正しいわけではなく、時として数が多い場合や少ない場合が起こります。胚の中の細胞の染色体の数が正常でない場合には、遺伝子の働き方が通常と異なることにより、妊娠に至らないことや、妊娠しても流産や死産となることが多くなります。 

PGT-A検査を受けることができる人とは  

PGT-A検査は検査を希望するすべての方が対象とはなりません。PGT-A検査の対象者は、以下の条件を満たした方です。 ※2022年4月現在 

これらの条件は、PGT-A検査を受けることによるメリットが大きいかどうかということに関係しています。 
 

〇医学的な条件 

・胚移植が2回以上連続して、繰り返し不成功で胎嚢が確認できる段階の妊娠に至らない方  

・流産を2回以上繰り返している方 

・染色体構造異常(夫婦いずれか) 

〇社会的な条件 

・婚姻関係があること(一般的な体外受精の実施対象と同様に、事実婚を含み、ご夫婦のそれぞれが文書による同意取得が可能な状態の方です。) 

これらは日本産科婦人科学会が主導して実施している臨床試験により設定されており、現在の医学的な根拠や諸外国の専門学会などの推奨を考慮した上で、設定されています。 

PGT-A検査のメリットとデメリット 

PGT-A検査にはメリットとデメリットがあります。メリットとデメリットを正しく理解することが大切です。

メリット 

・検査により正常染色体の胚が見つかれば、その胚を移植(1回当たり)した場合には妊娠率が高くなる 

・妊娠(1回当たり)の流産率の低下 

・妊娠の可能性が乏しい胚の移植を回避することによる妊娠までの時間短縮の可能性 

・流産時の心身の負担を避けられる可能性 

デメリット 

・検査により染色体が正常な胚が見つからない場合は、移植可能な染色体の状態の胚が得られるまで繰り返し採卵を実施する必要がある。 

・出てきた検査の結果が本当に正しい精度はおよそ80~90%である。正常胚であるにもかかわらず異常胚との誤判定となった場合には妊娠の可能性がある胚が移植対象から外れてしまうリスクがある。 

・胚からとった細胞の一部だけに染色体の数の異常や構造の異常が見られる状態(モザイク)が検査で確認された場合に、その胚を移植するかどうかの判断が難しい場合がある。 

・モザイクの胚であった場合に、移植により妊娠できで健康な子どもが生まれる可能性があっても移植しないという判断が行われてしまうことが生じる。そのため、子どもが持てるまでにより多くの時間がかかってしまう結果となる場合がある。 

・細胞を採取するにあたり胚盤胞へのダメージがある可能性 

・胚盤胞まで育たないと検査できないため初期胚の移植では検査が不可能 

・胚盤胞1個あたりおよそ10万円前後と費用が高く、複数個の検査では数に応じて費用が高くなる 

・流産・死産を必ず回避できるわけではない(染色体に関連する原因以外の流産や赤ちゃんの疾病に関しては診断できないため) 

1回の胚移植当たりの妊娠率がアップするといわれている理由  

PGT-A検査により1回の胚移植当たりの妊娠率が高くなるとされる理由は、胚の染色体数を評価し、異数性を示す胚盤胞を取り除くことで流産の可能性が減るためです。 

 また、胚移植当たりの妊娠率の向上、初回の妊娠までの時間の短縮も期待できます。 

ただし、検査をしても染色体正常胚を得ることができず、胚移植できないまま時間が過ぎる場合もあるため、治療を開始してから子どもが持てるまでの時間が短縮できるという証明はされていません。 

PGT-A検査項目と費用の相場 

PGT-A検査を受ける場合の費用には、胚盤胞一つあたりの検査費用と遺伝カウンセリング費用、また場合によってはご夫婦の染色体検査費用などが含まれます。 

・胚盤胞一つあたりのPGT-A検査費用の相場は10万円前後 

・遺伝カウンセリング費用の相場は1万円前後 

・ご夫婦の染色体検査の費用の相場は5万円前後 

ご夫婦の染色体検査は、2回以上流産を繰り返しているご夫婦を対象に行われることが多いです。その場合は不育症検査などもあわせて検討されることがあります。 

PGT-A検査は、2022年4月現在、自由診療として提供されており、検査費用は医療機関によって数千円から数万円の違いがあります。 

PGT-A検査の助成金  

2022年4月から不妊治療(体外受精などの高度生殖医療)が保険適用となります。しかし、現時点ではPGT-A検査については、保険適用の対象とはなっていません。 

現在、先進医療という枠組みで保険適用を目指した取り組みが検討されており、将来的には保険適用範囲内の治療となる可能性があります。 

PGT-A検査を受けるために付随する診療に対する助成金は自治体によって違いがあります。また、助成金を受けるには条件があり、その対象にあてはまっていなければ受けられません。 

しかし、PGT-A検査を含めた不妊治療にかかる費用を抑制したいという場合には、まずは居住地の自治体に問い合わせてみることが重要です。

 

PGT-A検査の流れ 

PGT-A検査の具体的な手法や流れは以下の通りです。 

・体外受精を行い、凍結基準を満たした胚盤胞まで成長させる 

・成長した胚盤胞の栄養外胚葉細胞の一部を生検 

・細胞をおよそ5~10個程度回収 

・生検後の胚盤胞は一旦凍結保存 

・採取した細胞は検査機関へ提出 

・アレイCGHやNGSなどの染色体の数の検査を行う 

・検査で染色体の数に異常がない胚が移植される 

遺伝カウンセリングでは何をする?

遺伝カウンセリングでは、遺伝に関係する悩みや不安・疑問などの問題解決を行い、あなたが検査内容について十分に理解した上で検査を受けるかどうかを決断できるようにサポートを行います。  

・科学的根拠に基づいた正確な医学的情報を提供する 

・患者自身で医療技術や情報を利用し問題解決のため心理面・社会面の支援を行う 

検査を検討している方は、すべて遺伝カウンセリングの対象となります。夫やその他の家族が遺伝カウンセリングに参加することも可能です。 

・PGT-A検査をうけることによるメリット、デメリットを理解する 

・PGT-A検査に関わる生命倫理的な視点からの問題点を理解する 

あなた自身が、PGT-A検査を受けるかどうかを判断する上でとても大切なプロセスとなるため、遺伝カウンセリングでは気になることは些細なことでも質問することをおすすめいたします。 

さて、最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

体外受精で得た胚の染色体の数を、移植の前に調べて染色体の数を見分ける検査、PGT-A。現在の日本国内での実施状況やメリット・デメリットについて、ご理解いただけたでしょうか。 

PGT-A検査を受けるか検討するにあたっては、検査対象者の条件にあなたが該当しているかを確認し、お近くの検査を実施している医療機関にご相談くださいね。

監修:東京大学大学院医学系研究科 産科婦人科学講座 准教授  

日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医|日本周産期・新生児医学会 周産期(母体・胎児)専門医 ・指導医|日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医|日本超音波医学会 超音波専門医 

永松 健 先生 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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