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最後に“ありがとう”を言える時間を――制限された別れの先に、葬儀現場が問い直した「見送る時間」の意味 「聞かせてくださいあなたのコロナ禍~私たちは何を学んだのか?」

人が集まること自体がリスクとされたコロナ禍。
その影響は、人生の最期を見送る「葬儀」のあり方を大きく変えた。

人数制限、対面の制約、そして“会えないままの別れ”。
現場では感染対策と向き合いながらも、「何とかしてあげたい」という思いとの葛藤が続いていた。

葬儀社として見てきた、家族の悲しみ、業界の変化、そして「時間をかけて見送ること」の意味。
田中葬祭株式会社の田中友子さんが語るのは、コロナ禍を経て改めて浮かび上がった、人と人とのつながりと“ありがとう”の重みだった。

田中さんのお話はここからお聞き頂けます(約17分30秒)

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「まず守るべきは従業員」――半分の人数出勤と徹底した感染対策

2020年の2月頃からコロナの感染が広がり始めて、まず会社として取り組んだのは、従業員の出勤体制でした。

葬儀の仕事は、24時間365日、いつ何が起きても対応できるように、必ずスタッフが宿直で会社に泊まっています。だからこそ感染対策が最優先で、例えば10人いたら半分出勤という体制をとっていました。

万が一感染が出た場合は、その時に一緒にいた従業員は休ませる。そういった形でリスクを分散していました。

あとは本当に基本的なことですが、マスクと手洗いの徹底ですね。
インフルエンザの時期は毎年誰かしらかかっていたんですけど、コロナ禍では一人も感染がなかったんです。
その時、「やっぱり基本って大事なんだな」と強く感じました。

「外で待機するしかない」――葬儀社が直面した現場の変化

一番大変だったことは、自社、他社、そしてお客様、それぞれの立場で違いました。

自社の目線でいうと、病院へのお迎えです。
通常は病棟や霊安室まで入るのですが、コロナ禍ではスタッフは外で待機し、ご遺体を引き取るという形になりました。

防護服を着て対応し、搬送後は霊柩車もその都度消毒。
感染対策自体は業界として研修もあり慣れている部分もありましたが、「感染を広げない」という実際での対応は初めてで、やはり混乱はありました。

支え合った現場――エンバーミング会社と医師の助言

コロナで亡くなった方の場合でも、そのまま火葬場に直葬というのではなく、火葬場にも対応できる時間や態勢に限りがあり、一旦、霊安室にてお預かりをしました。エンバーミング会社が専用の霊安室を設けて対応してくださることもありました。

感染対策が徹底されているエンバーミングの専門の会社が「何かあったらうちでやりますよ」と声をかけてくださって、本当に助かりました。

また、自社でも病院の先生に来ていただいて、本社や霊安室、家族葬ホールを見ていただきました。

「ドアは開けっぱなしに」「ペンは一本に」「飴は置かない」「飛沫の心配は、祭壇に向かっての読経は大丈夫」などなど
そういった細かいところから、換気の方法まで具体的にアドバイスをいただいて、現場の安心感につながりました。

「顔も見られない別れ」――ご家族にとっての過酷な現実

一番つらかったのは、ご家族のお別れのあり方でした。

コロナで亡くなられた方の場合、人数制限があり、最後に顔を見ることもできないケースもありました。
今思い出しても、もし自分の家族だったらと思うと、涙が出るくらいつらい出来事でした。

さらに、行政の方針も一枚岩ではなく、二つの省庁で見解が異なり、
「5人までなら可能」という省庁と、「火葬場の判断に任せる」という省庁の間で、現場は板挟みになりました。

何とかしてあげたい。でもできない。
そのもどかしさは、今も心に残っています。

縮小する葬儀が、地域の仕事を奪っていった

葬儀の規模が小さくなることで、影響は業界全体に広がりました。

人を呼ばない=花を飾らない、料理を出さない、返礼品も出さない。
バスも使わない、宿泊もしない。

その結果、地域の花屋さんや料理屋さん、返礼品業者、布団屋さんなどの仕事が減り、廃業や転業も出てきました。

実際に、多摩・武蔵野地域でも
料理屋さんが2社、お花屋さんが1社、布団屋さんも1つなくなりました。

葬儀は一つの産業であり、地域とつながっていたことを、改めて実感しました。

「家族葬でいいよ」――コロナが変えた価値観

コロナをきっかけに、「家族葬でいいよ」という考え方が一気に広がりました。

もともと「お金をかけたくない」と言いづらかった空気があった中で、
「感染対策のために人を呼ばない」という理由ができたことで、それが言いやすくなったんです。

その結果、一般葬をしなくてもいいという価値観が定着していきました。

「もっとちゃんとやればよかった」――一日葬が残した悔い

最近増えている一日葬ですが、誤解も多いと感じています。
実際には費用が大きく変わるわけではなく、違うのは「故人とのお別れの最期の時間をどれだけ過ごすか」です。

ある一日葬のケースで、火葬後に喪主の奥様が突然涙を流して、こう言われたんです。
「もっとちゃんとしたお葬式をやってあげればよかった」

お通夜から告別式へと時間をかけて気持ちを整理するプロセスがないまま、
一気にお骨になってしまうと、現実を受け止める時間が足りない。

「あっという間に終わってしまった」という感覚だけが残ってしまうんです。

その言葉は、私たちにとっても強く心に残りました。

「ありがとう」を言うための時間――葬儀の大切な意味

葬儀は、亡くなった方の人生をみんなで振り返る時間です。

その人がいたから今の自分がある。
その人がいたから、このご縁がある。

そうやって感謝の気持ちが生まれて、最後に「ありがとう」と伝える。

コロナ禍でその機会が減ってしまったことで、
「お別れしたかった」「ありがとうを言いたかった」という心残りを抱える人も増えました。

最後に顔を見て言葉をかけることで、残された人の心も整理される。
その意味でも、お葬式という場は大切にしていきたいと強く感じています。

どんな時代でも変わらないもの――支え合いと感謝

もし2020年の自分に会えるなら、伝えたいことは一つです。

どんな時代でも、人は支え合って生きていく。
それはコロナでも、そうでなくても変わらない。

だからこそ、ありがとうの気持ちを忘れずにいたい。
どんな状況でも、それがあれば人は前に進めると思うんです。

ありがとうございます。