コロナ禍で「エッセンシャルワーカー」という言葉が広まりました。
金融機関の一つでもある郵便局も、社会を支えるインフラとして窓口を止めるわけにはいきません。
マスクや消毒液の確保、職員の体調管理、感染者が出た際の対応など、現場では手探りの判断が続いていました。
さらに、感染の可能性がある検体の郵送など、これまでにない対応も求められました。
一方で、常連のお客様からの声かけや、地域の人との何気ない交流に支えられる場面もあったといいます。
西東京市の田無南町二郵便局の局長・原島俊幸さんに、コロナ禍の現場で起きていたことを伺いました。

原島さんのお話はここからお聞き頂けます(約16分)
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新人から局長へ、そして再びこの局へ
田無南町二郵便局に勤めております、局長の原島俊幸です。
局長になってからは13年目になります。
実はこの郵便局には、新人の頃にも勤めていました。一般社員として7、8年ほど勤務して、その後いくつかの郵便局を経験し、局長として戻ってきたという形です。
「窓口を閉めない」ための手探りの日々
コロナが世界的に広まり、日本でも感染が拡大していきました。
その頃よく言われていたのが「エッセンシャルワーカー」という言葉です。
郵便局も金融機関の仲間のようなものなので、簡単に閉めるわけにはいきません。
「どうやって窓口を閉めずに営業を続けるか」——それが本当に大きな悩みでした。
社員が感染しないようにすること。
お客様がウイルスを持ち込んでしまう可能性への対策。
郵便局内で感染が広がらないようにどうするか。
どこの事業所も同じだったと思いますが、本当に手探り状態でした。
マスク探しや交代勤務の工夫
最初の頃は、消毒液やマスクを確保するのがとても大変でした。
会社からもできる限りのサポートはありましたが、当初は物資が足りません。
他の郵便局の局長たちと「どこかにマスクがないか」と情報交換をして、「この薬局に入荷するらしいよ」と教えてもらったりしながら、何とかしのいでいました。
会社としては、社員全員を出勤させるのではなく、窓口業務が回るギリギリの人数で営業するという体制を取りました。
「今日はAさん休んでね、明日はBさん休んでね」というように、出勤人数を減らして営業する。
いわゆる出勤抑制ですね。
それと同時に、営業時間も短縮しました。
理由の一つは、ラッシュ時間通勤に発生する感染リスクでした。
社員からも「電車やバスがどうしても密になる」という声が上がっていました。
そこで出勤時間と退勤時間をずらすため、前後1時間ほど営業時間を短縮したんです。
なるべく通勤ラッシュを避けて出勤できるように、という配慮でした。
それでも郵便局は閉まった
ー郵便局は閉めずに済みましたか?
結果としては、閉まりました。
どれだけ感染対策をしても、どうしても感染してしまうことがあります。
そうすると郵便局を消毒しなければならないですし、そもそも少人数で運営しているので、人手が足りなくなってしまうんです。
通常であれば、他の郵便局から応援が来て営業を続けるのですが、コロナの場合は事情が違いました。
感染が出た局に応援に来ると、そこで感染してしまう可能性があります。
そしてそのまま別の郵便局にウイルスを持ち帰ってしまうかもしれない。
そうなると、局ごとに対応するしかありません。
結果として、どうしても閉めざるを得ない状況がありました。
当局でも、1週間ほど休止したことがありました。
正直なところ、「頼むからみんな体調を崩さないでくれよ」と、そんな気持ちで毎日過ごしていましたね。
感染者が出ると膨大な報告業務
感染者が出ると、会社への報告もとても細かいものでした。
発症までにどういう行動をしていたのか。
郵便局内で誰とどのように接していたのか。
そういったことを一つ一つ報告しなければなりません。
それも含めて、本当にいっぱいいっぱいだったなという記憶があります。
「密を避ける」難しさというジレンマ
営業時間を短縮すると、今度はお客様がその時間に集中してしまうんです。
「結局ここ密じゃない?」
「ロビー密じゃない?」
そんな状況もありました。
それでも、ひたすら窓を開けて換気をしたり、寒い中でも空気を入れ替えたりしながら、どうにかやりくりしていました。
お客様の理解に救われた
お客様の理解はどうだったかというと、当局では比較的恵まれていたと思います。
普段からご利用いただく固定のお客様が多いので、怒鳴られたりするようなことはありませんでした。
むしろ
「大変ね」
と声をかけていただくこともありました。
その点では本当に助けられたと思います。
コロナ禍で増えた郵便物
一部では、荷物が増えたという実感もありました。
家族や親族がコロナに感染して外出できなくなったときに、食べ物などを送るケースです。
また、学校がオンライン授業になったことで、テキストや書類を郵送するケースも増えました。
新学期の教材や提出物など、対面でできないやり取りが郵送に変わったんです。
「検体郵送」という新しい業務
もう一つ大変だったのが、コロナの検体を郵送するケースでした。
コロナの検査キットを郵送することがありましたよね。
実はこれ、郵便局としてはかなり慎重に扱わなければいけないものなんです。
検体には感染性のウイルスが含まれている可能性があります。
そのため、厳しい梱包基準があり、それを満たしていないと引き受けることができません。
正しいマークが表示されているか、梱包が適切か。
お客様にメーカーへの確認をお願いすることもありました。
さらに、検体郵便物は通常の郵便物と分けて取り扱います。
職員が感染するリスクをゼロに近づけるためです。
特に介護施設などから、まとまって送られてくることもあり、その対応はかなり大変でした。
コロナ禍で生まれた良い変化
逆に、コロナ禍で良かったこともあります。
郵便局はもともと会議が多く、以前はどこかに集まって対面で行うのが当たり前でした。
それがオンライン会議になったことで、移動時間がなくなり、局の人手が減ることもなくなりました。
これは本当に助かりましたね。
「体調が悪いときは休む」職場へ
もう一つ大きい変化は、体調が悪いときに休みやすくなったことです。
以前は少人数の職場なので、多少体調が悪くても無理をして出勤することがありました。
でもコロナ以降は、
「体調が悪いなら休んでください」
という雰囲気が自然にできました。
社員も素直に体調不良を伝えてくれるようになりました。
生活を支える0%貸付制度
コロナの時期は、資金繰りに困る個人事業主の方や、生活に苦労される方も多くいました。
郵便局には、契約している保険を担保にお金を借りられる制度があります。
コロナ禍では、一時的な融資として**利息0%**で貸し付ける制度がありました。
生活費やお店の運転資金として利用された方も多く、
「助かりました」
と言っていただくことも多かったですね。
「郵便局も休むことがある」という変化
以前は、郵便局は何があっても閉めてはいけない、という考えが大前提でした。
でもコロナ以降は、人手が足りないときには休止することもある、という考え方が少しずつ受け入れられてきました。
お客様も「そういうこともあるよね」と理解してくださる部分が増えたと思います。
会社としても、状況に応じて柔軟に営業を調整する方向になってきたのではないでしょうか。
家の前の縄跳びが、子どもたちの遊び場に
個人的な話ですが、コロナの時期は家にいる時間が増えて、運動不足になりました。
以前は公園でジョギングしていたんですが、人が増えてしまって行きづらくなりまして。
そこで久しぶりに縄跳びを買って、家の前でやるようにしたんです。
うちの前は袋小路で車が来ないので、縄跳びしていると近所の小学生が集まってきて。
気がついたらみんなで縄跳びしていたことがありました。
7、8人くらい集まってしまって、
「これ密じゃないかな?」
なんて言いながら、ちょっと離れたりして。
でも、そんなふうに近所の子どもたちと仲良くなれたのは面白かったですね。
今でも会うと手を振ってくれます。
家族との時間、そして母への心配
コロナの時期は、実家に帰れないということもありました。
母が一人で暮らしているんですが、電話はしても、なかなか顔を見に行けない。
それはやっぱり心配でしたね。
一方で、家にいる時間が増えたことで、家族と過ごす時間が増えたのは良かったと思っています。
ありがとうございました!

