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「列車を止めない」現場の緊張と、延期になった娘の結婚式 200人の乗務員を守る現場の管理職が語る「仕事と家族のコロナ禍」  「聞かせてくださいあなたのコロナ禍~私たちは何を学んだのか?」

2020年、新型コロナウイルスは社会のあらゆる場所を揺るがしました。
鉄道の現場も例外ではありません。乗客は一時、平均で8割減。それでも列車を止めるわけにはいかない――。約200人の乗務員を管理する立場として、感染を防ぎながら運行を守る日々が続きました。

一方で、家庭でも大きな出来事がありました。娘の結婚式の延期、コロナ禍で生まれた初孫との距離感。仕事と家族、両方の現場で向き合った“あの頃”とはどんな時間だったのか。

鉄道会社の管理職が振り返る、現場の緊張と家族のコロナ禍です。

※お写真や音声は非公開です

//// お話の記事はこちらから //// 

ニュースの出来事が、現場の危機に変わった

私は鉄道会社で働いています。2020年当時は、約200人いる乗務員を管理する職場にいました。

最初は、テレビのニュースの中の出来事でした。
ダイヤモンド・プリンセス号のニュース。
横浜に来た船の中で感染が広がっているという報道を見て、「大変なことが起きているな」と思っていた程度でした。

ところが、2月、3月と日を追うごとに、それがだんだん身近なものになっていきました。

そして初めての緊急事態宣言。

私たちの職場でも感染予防のための対応が一気に始まりました。
消毒の徹底、ビニールシートの設置、接触を減らす工夫、清掃方法の細かな変更。
今までにないほどの対策が求められました。

ただ、それを実際にやる人員が足りない。
結局、時間外で対応したり、現場の負担はかなり増えました。

乗務員を管理する立場としては、もし感染者が出れば長期で休ませなければならない。
その場合のシミュレーションも行いました。最悪の場合は列車の減便まで検討するような状況でした。

初めての感染者は、2021年のお正月だった

うちの会社では結果的に減便はありませんでした。

ただ、職場で最初に感染者が出たのは2021年のお正月です。
親族が集まった場で感染してしまったようでした。

職場では注意喚起していましたが、お正月というイベントで人が集まる。
そこで最初の感染者が出ました。

それをきっかけに、職場とは直接関係ない場所でも、ぽつぽつと感染者が出るようになりました。

職場の懇親会はもちろん中止。
会議や教育のやり方も大きく変わりました。

会議も教育も「書面」に変わった

オンライン会議が入ってきたのは少し後でした。

現場の職員向けの設備はすぐには整わなかったので、一般の職員向けの会議や教育は、基本的に書面で行うようになりました。

それまで対面で行っていた会議や教育を、

  • 書類で配布する
  • 映像を見てもらう

という形に変えていったんです。

乗務員を守るため「同じ人とだけ組む」シフト

鉄道の仕事は、どうしても人が関わらないと成り立ちません。
在宅勤務はできませんから、皆さん現場に来て働きます。

そこで考えたのが、接触機会を減らすことでした。

その一つが、
運転士と車掌の組み合わせを固定すること。

通常はシフトでいろいろな人と組みますが、コロナの期間は同じ人と組ませました。

正直に言うと、気が合う人もいれば合わない人もいます。
それでも、3〜4か月くらい同じ人同士で組んでもらいました。

もし感染しても、接触範囲が広がらないようにするためです。

乗客は平均で8割減った

緊急事態宣言の頃、乗客は平均すると、8割くらい減りました。

学生はオンライン授業でしたし、在宅勤務も増えましたから。

当然、乗客が8割減れば収入も8割ぐらいになります。
曜日や月によって多少違いはありましたが、平均するとそのくらいでした。

今はどうかというと、2019年度と比べて9割ちょっと
完全には戻っていません。

「会社への帰属意識」が薄れた気もする

コロナ以前は、とにかく人が集まる文化でした。

会議や教育だけでなく、親睦行事も多かった。
コミュニケーションを大事にする流れでした。

それが緊急事態宣言以降は真逆になりました。

「人が集まらないようにしましょう」
そういう方向に変わりました。

その影響なのか、
会社への帰属意識のようなものが少し薄れた気もします。

みんな個人の生活を大事にするようになった。
それはそれでいいことでもあると思いますけどね。

列車を止めないための徹底した感染対策

運行を止めないためにやったことはいろいろあります。

例えば、乗務員の寝室。
感染者が使った場所は専門業者が消毒しました。

食堂でも対面は禁止。
座るときは対角線。

会話も控えるように言いました。

点呼のときもビニールシートを立てて、紙を見せながら確認する。
とにかくコミュニケーションの取り方が変わりました。

電車の中も大きく変わった

電車の中も変わりました。

例えば、
・抗菌の吊り革
・抗菌加工の手すり
・空気清浄機

こういった設備が増えました。

トイレも同じです。
抗菌仕様や空気清浄機を入れたり。

すべてがコロナの影響とは言えませんが、
大きなきっかけになったのは確かですね。

カスタマーハラスメントも増えた印象

コロナ以降、もう一つ変わったのがカスタマーハラスメントです。

ビニールシート越しで話すと声が聞き取りづらい。
すると声が大きくなる。

それが「威圧的だ」と受け取られてしまうこともあります。

カウンターに何もない状態で話すのとは、
どうしても印象が変わるんですよね。

今の現場の人たちは、本当に大変だと思います。

コロナ禍で娘の結婚式が延期に

仕事以上に、私の場合はプライベートの変化が大きかったです。

2020年3月7日、三女の結婚式を横浜で予定していました。

2月下旬に衣装合わせに行った帰り、
「近くだから見てみよう」と言って、ダイヤモンド・プリンセス号を実際に見ました。

その後、結婚式は延期になりました。

キャンセルだと250万円のキャンセル料。
延期なら半年以内なら無料。

結局、8月23日に延期しました。

結婚式の頃には妊娠していた

面白い話がありましてね。

結婚式は半年延期になったんですが、その間に同棲を始めたんです。

そうしたら、妊娠したんです。

最初に選んだウェディングドレスが着られなくなってしまった。

そんなエピソードもありましたね。

孫が生まれても、誰も抱けない

2021年1月10日、娘にはじめて孫が生まれました。

でも、病院には誰も入れない。

生まれた子の父親も入れない。
私たち祖父母も入れない。

娘から送られてきた写真には、
病院の外の横断歩道に立っている娘婿が写っていました。

本当なら、生まれてすぐ抱きしめたいですよね。
それができない。

あれは本当にかわいそうでした。

言葉じゃないときってあるでしょ。 何かあれば背中さすってあげるとかさ、 本当に、、でも出来ないっていうのがね、切なかったですよね。

家の中でも徹底した感染対策

娘が里帰りしてきてからも、気を遣いました。

孫を抱く前に
・手洗い
・うがい
・消毒

家の掃除もいつも以上にしました。最初は本当に神経を使いましたね。

そして、この機会に家のリフォームをしたんです。

トイレ、キッチン、風呂、洗面所。
水回りを全部直しました。

「どうせ掃除するなら、この機会に」ということで。

コロナがきっかけで変わったことの一つですね。

子どもたちの免疫力が下がっている気がする

個人的な印象ですが、
子どもたちの免疫力が下がっている気がします。

消毒して、きれいにしている。
その結果、少しのことで体調を崩す。

私たちの昭和の頃は、もっと雑草みたいに育っていましたからね。

次の感染症に備えて

コロナがまた来るかどうかは分かりません。

でも人類は、ウイルスとの戦いの歴史です。
また別の感染症が来るかもしれない。

だからこそ、

  • 規則正しい生活
  • 食事
  • 睡眠
  • 運動

そういう基本が大事なんだと思います。

触れ合いを避けて、コロナ以降、山登りをするようになった

私は山登りをするようになりました。

自然の中に行くと、人も少ないし、四季も感じられる。
気分もリフレッシュできます。

仕事や日常から離れる、いい時間ですね。

やっぱり大勢いる職場だから、 妻も子どもを扱う仕事だからとなると、
自分が感染しないようにしたいので
人が多くいるところには行かなくなるよね。

「残りの人生をどう楽しむか」


嫌なことは、忘れた方がいいのかもしれません。

いつまでも引きずっていても仕方がない。

残りの人生をどう楽しむか。
そこを大事にしたいと思っています。

孫たちが元気に育ってくれれば、それで十分。

あとは、自分の人生を楽しんで、
葬式代だけ残して「さよなら」できればいいかな。