ライブやイベントが相次いで中止となり、音楽活動が止まったコロナ禍。
シンガーソングライターとして活動する一方で、物流の現場にも立っていた和(Nagomi)さんは、地域の暮らしを支える“届ける”仕事を続けていた。
店頭から消えたマスクの裏側、止めることのできない配送の現実、そしてSNSやラジオを通じて届けた歌。
音楽と物流、二つの現場から見つめたコロナ禍の日々を通して見えてきたのは、「必要なものを、必要な人に届ける」という仕事の本質と、地域をつなぐ力だった。
和(Nagomi)さんのお話はここからお聞き頂けます(約12分)
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ライブが止まった日々
シンガーソングライターの和(Nagomi)です。歌手兼ラジオパーソナリティをやっていました。
イベントは軒並み中止。ライブもできない。ギターレッスンも外出禁止で止まりました。
本当に、何もできなくなったんです。
それで、何かしなければ生活ができない。もともと運送はやっていたので、別の職種の運送業に携わることにしました。
夏のマスクは、命がけだった
配達中もマスクは必須でした。
特に夏は本当にきつかったです。息苦しくて。
会社からは「マスクは外さない」と言われていた。
重いものを運ぶと呼吸が乱れるんですよね。そこにマスクですから、酸素不足を感じることもありました。夏のマスクは本当に辛かったです。
“マスク不足”の裏側~納品センターには山と積まれていた
マスクは会社からも支給されていましたし、日用雑貨の納品センターからもいただいていました。
「実は、センターにはマスクの在庫が山ほどあったんです。」
お店の棚は空。でもセンターにはある。
メディアで“マスクがない”と報道される。
それを見て店に行く。本当にない。
別の店へ行く。2個あれば2個とも買う。
“これでは足りなくなるかも、、、、”とまた別の店へ。
みんなが同じ行動をしていたんです。
実は出荷が間に合わなかっただけ。
工場が止まっていたわけではない。
みなさんが、必要な分だけ買っていれば、供給は足りていたと思います。
東日本大震災との違い
和さんは2011年、東日本大震災のときも物流に関わっていました。
そのときは工場が被災していました。
牛乳はあっても、パックを作る工場が止まって出荷できない、ということもありました。
しかしコロナは違う。
工場は被災していない。
だから、普段通りに買っていれば足りていたんです。
震災とコロナ。
同じ“非常時”でも、構造はまったく違っていたといいます。
止められない物流
物流は止まりませんでした。
「生産者がいても、運ぶ人がいなければ家庭には届かない。
コロナ禍でも配送は必須でした。」
一件届け終わるごとに消毒。
手、ハンドル、ドア、触れるところすべて。
会社から消毒スプレーが支給され、マスクもこまめに交換。
それでも怖さはあった。
「自分が感染することよりも、誰かにうつしてしまうことが怖かった。その人が重篤になってしまったら、、、。未知のウイルスでしたから。」
閉まるコンビニ、増える宅配
当時はコンビニ配送を担当。
1日50件回るうち、2〜3件はコロナで営業できない状態が続きました。
一方で、宅配は急増。
「外出がはばかられる中、宅配の重要性はすごく感じました。Uber Eatsもそうですよね。」
家具配送では、お客様に消毒確認書へサインをもらってから作業開始。
「宅配は本当に神経を使いました。」
SNSと“歌の宅配”
コロナ禍で救われたことは?
「歌手としては、SNSでファンの方と交流できたこと。
“歌を待っている”と実感できたのは本当にうれしかったです。」
YouTubeで歌を届ける。
「ある意味、これも“宅配”ですよね。」
ただ、音楽は無力だと感じたこともあった。
「災害直後に歌いに行くのは違う。まずは復興支援。
音楽は最初に来るものではない。」
でも――
「落ち着いたあと、人の心をつなぐのは音楽。
無力だけど、必要な存在だと思いました。」
教訓は“つながり”
コロナ禍で得た教訓は、コミュニケーション。
「友人、知人、家族と、以前より頻繁に連絡を取るようになりました。」
何かあったとき、すぐ動ける関係をつくる。
「知り合いがコロナにかかったとき、普段連絡を取っていなければ、食材を誰に頼んでいいか分からない。
日頃から“何かあったら言ってね”と言えていれば、助けられる。」
逆もまた然り。
「自分が寝込んだとき、助けてもらえたかもしれない。」
だからこそ、つながりは大事だといいます。
ラジオも“情報の宅配”
ラジオについては、こう語ります。
「ラジオは一人一人にすぐ届けられる情報源。
特にコミュニティFMは、地域に必要な情報をピンポイントで届けられる。」
電波を通しての“宅配”。
「必要なツールだと思います。」
そして物流の目線から、最後にこう締めくくりました。
「必要な分は、必要な分だけ買う。それだけで世の中は回る。
情報も同じ。本当に必要か、正しいかを見極める力が大事。」
コロナ禍を経て見えたのは、
“届ける”ことの意味と、“つながる”ことの大切さでした。
