まつばらホームクリニック『ラジオ在宅NOW』!
この番組は、保谷駅から徒歩3分の場所に位置する、まつばらホームクリニックの松原清二院長に、日頃医療の現場で感じていらっしゃることをお話頂き、皆さまにも在宅医療に対しての理解をより深めて頂ければと思います。
第1週と第3週に本放送を、その他の週は再放送をお送りします!
【5月のテーマ】
『在宅医療とラジオについて』
皆様ぜひお聴きください!!
西東京市を中心に患者さんの自宅に行き、診察をしている在宅医療専門診療所「まつばらホームクリニック」のホームページはこちら→https://m-hc.jp/
↓放送内容を文字でもお読みいただけます!
田中ヒロコ:では、松原先生、本日もどうぞよろしくお願いします。
松原先生:よろしくお願いします。
田中ヒロコ:今日もですよね、先生。
松原先生:はい。今日も「患者さんにエールを送ろう」と。特に「入院中の患者さんにエールを送ろう」という企画でやってます。
田中ヒロコ:ちょっとね、この企画、私も毎回すごく、改めて先生の温かさっていうのもすごく噛みしめてるんです、毎回。今日もやっぱり患者さんいらっしゃるんですよね、先生。
松原先生:そうですね。一応ですね、今日入院した患者さんなんですけど、この患者さん元々90歳の元外科医の先生で。
田中ヒロコ:90歳でいらっしゃるんですか!?
松原先生:もうお医者さんは、もちろんやられていないんですけど、ただ元外科医の先生で。それで仮にUさんといういうふうにしますけど、その方結構僕にいろいろ教えてくれるんですよ。
キリスト教をご信仰されていると思うんですけど、人間自分は十分年取ったから、そんなに医療を受けたくないとか、家族にも迷惑掛けたくないとか、そういうような話をされている方なんですよ。
だけど、その人を支えているご家族は、近しい人は3人いて、みなさんが支え合ってその人を支えているんですよ。
で、その人のところに行くと結構本好きなもんでね、僕もともと親が熊本県なんですけど、そしたら「先生ね、熊本の人はすごいよ、熊本の人はすごいよ」って言っていて熊本県の歴史とかいう本とか貸してくださったんですよ。何で持ってるんだろうこの人とか思って、でも貸してくださった。
あとは、その先生の出身の大学の勉強会があると、「これは役に立つから行った方がいいよ」とこう、いろいろ教えてくださるんですよ。で、「ありがとうございます。」と話してたまに行くこともあるんですよ。
やっぱりですね、どうしても年齢的に何か病気が出てきてしまうという仕方がないところで、そんな中でもすごく勉強が好きな方ですから高校物理とか、90歳で大学受験の英文法とかこんな分厚い本とか読んでらっしゃるんですよ。
田中ヒロコ:え、Uさん、いまだに?
松原先生:いまだに。
田中ヒロコ:勉強、すっごい。
松原先生:そうですよね。うちの娘が、去年大学受験してたんで、似たような本見たことあるなと思ったら、「いや、私勉強好きなんで勉強するんですよ」とか言って。
田中ヒロコ:すごいですね。
松原先生:すごいですよね。
田中ヒロコ:え、それすごい尊敬します。
松原先生:すごいよね。
田中ヒロコ:じゃあ、勉強しなきゃってすごいなんか今思います、Uさんすごいですね。
松原先生:しかもそのUさんの本見るじゃないですか。赤のマーカーとかで囲ったりしてて、全ページそうなってるんですよ。
田中ヒロコ:えー。すごいですよね。
松原先生:で、僕が見たのは英語と物理の本。あと、僕ら世代のバイブルの内科の本って、「ハリソン内科学」っていう本があるんですけど、それをちゃんと置いてあって、バーって線引いてあって。しかも英語で書いてあって「バー」って引いてあって、すごいなこの人って思って。
松原先生:そういう人を見ると、いくつになってもやっぱり医者って勉強し続けるっていうことは大切だし、知的好奇心を持ち続けることは大切なんだなというのは教えて頂いてるんですよ。
田中ヒロコ:そうか90歳、Uさん90歳だから人生においても、お医者さんとしても先輩でいらっしゃる。というかお医者さんを見るってこともあるってことですよね。
松原先生:ありますね。ただ、お医者さん同士の方が、どっちかというと医者独特の考え方っていうのがやっぱりあるんですよ。
田中ヒロコ:あ、そうなんですね。
松原先生:やっぱり例えば、こういう、例えば何て言ったらいいんだろう。
臓器の生理っていうのは、心臓の動きとか、骨の作りとか壊れるメカニズムとか。そういうのを、そのままぱっと話せば、多分二度三度話さななくても、ぱっと理解できてしまう。その常識っていうのをお互いにあるんですよね。
田中ヒロコ:そうなんですね。
松原先生:そういう会話をするから、結構早くお互いにコミュニケーション取れるってところはあるんですよ。
田中ヒロコ:そうなんですね。でもそれはそうですよね。
松原先生:ただその先生に言われるのは、「先生、いろんな科のことを知ってるけどどこでそんな勉強してるの?」とか言われて、「それは在宅(医療)の場合全部の科を見ないといけないですから、そうも言っていられませんからね。」って言ったら、「先生、偉いね~」っておっしゃってて。でも、その先生にちゃんと説明するために、本当にちゃんと勉強しなきゃなって日頃から思ってるんですよ。
田中ヒロコ:松原先生にもやっぱり影響をすごく与えてくださって。
松原先生:すごい影響をくださいますね。すごく紳士的な人で、僕も年取ったらこういう先生みたいな感じになりたいなあとか、結構憧れたりもしてるんです。
田中ヒロコ:かっこいいですよね。
松原先生:かっこいいですね。ところが、その先生90歳というこのご年齢で、「長く生きてるのって結構辛いんだよね」っていうふうにおっしゃってたんですよ。「なんか早く死ねる薬ないかなあ」とか不穏なことをおっしゃって、「先生それはちょっと無理じゃないですか」ってお話しして、「そうかい?でも家族とか身内とかに自分が存在することで迷惑かけていないかねえ」っていうふうに言って、それはちょっと僕は先生のご年齢じゃないからご心境を100%を理解することはちょっと僕も無理かもしれないけれど。
松原先生:でも先生のお話を、一人のご家族が元々僕の知り合いなので、話すると結構嬉しそうにお話されるから、「必ずしもそういうふうに思ってるわけではないと思いますよ」って話をしたんですよ。そしたら、「そうか、でもなー」っていうふうに。
でも実際ご年配の人でそういうふうに思っていらっしゃる方って、びっくりするくらいやっぱりいらっしゃるというのも事実なんですけどね。
田中ヒロコ:でも、そういうふうに思っていらっしゃるっていうのがすごく素敵だなって感じちゃいましたけどね。
松原先生:それは周りに対する気遣い?
田中ヒロコ:はい。そういうことを考えていらっしゃるっていうのが本当素敵な人なんだなって。
松原先生:優しくて上品な人なんですけどね。で、その人がここ最近1ヶ月ぐらいよく転ぶって話になったんですよ。それで私の知り合いがご家族なんですけど、「ちょっと父をもうちょっと調べてほしい」っていうことで頭のMRIを調べたら、脳梗塞が新しいのが何か所かできていて、それが一因であった可能性はあるなということで、ご本人に入院を勧めたんですよ。
「先生ちょっと、今回脳梗塞新しいのが出ているもんですから、ご入院されたほうが本来は良いと思いますけど。ただ先生としては、自分としては年齢的に色々したくないとかおっしゃってたから、あとは飲み薬で治療するとかそういうのもありますけどどうされます?」って言ったら、「そうなんですよ、入院したくないんですよね。」っておっしゃってて、で「分かりました、じゃあ飲み薬でちょっとやっていきましょう」って話だったんですけど。
でも翌日になって、やっぱりちょっと足が痛くなったりとか、いろんな症状が出てきて、「やっぱり入院したい」とおっしゃっていて、そうかと。
いろいろネガティブなことを人生に対して、生き続けることに対してネガティブなご感情を持たれていても、やっぱり実際のところは、症状がまた痛みが出てきたりとかそうなったりいろんな脳梗塞とか新しい情報を知ったりすると、やっぱり人間の感覚っていうのは考えっていうのは変わるんだなっていうのは、しみじみと感じたしそれは医者であっても、医学に対しての知識がある医者であっても、そういうふうに思うんだなあっていうのはすごく感じましたね。
田中ヒロコ:本当にまさに今日、入院されたそうですよね。
松原先生:そうですね。僕自身としては、入院を決して積極的に受け入れたご感情じゃないのかなと思いながらも、また頑張って、その在宅に戻ってきて頂いてもらって、また色々僕も教えて頂きたいなというふうには思ってますけどね。
田中ヒロコ:そうですよね。Uさん先生待ってますよ~。本当にすごく素敵な方だと思うのでね。
松原先生:本当にそうなんですよね。その先生の頃って、やっぱりお医者さんってどちらかというと神様的に思われちゃうことが田舎のほうとかあったらしくて。ただ、その先生は、そういった地域に行った時も、「医者は神様じゃない。人間はそういうふうに思ったら、もう最後だ」と。
田中ヒロコ:なんかかっこいいですね。Uさん本当に、お話伺ってると。
松原先生:やっぱりね、「あくまでもそれは思い上がっちゃいけないんだ」と、いうふうにおっしゃってて。
僕もいろんなドクターから教育を受けてきてて、思っているのがあくまでも患者さん自身が持っている自然治癒力に対して我々がアシストしているだけなので、アシストが良い塩梅かどうかというのがあると思うんだけども、あくまでも直しているのは患者さんなんだって。そういうのを改めてUさんは90歳の本当に大先輩ですけども、教えて頂いてもらって、本当に励みになっています。