まつばらホームクリニック『ラジオ在宅NOW』!
この番組は、保谷駅から徒歩三分の場所に位置する、まつばらホームクリニックの松原清二院長に、日頃医療の現場で感じていらっしゃることをお話頂き、皆様にも在宅医療に対しての理解をより深めて頂ければと思います。
第一週と第三週に本放送、その他の週は再放送をお送りします!
【3月のテーマ】
『在宅医療の心不全ついて』
皆様是非お聴きください!!
田中ヒロコ:では松原先生、本日もどうぞよろしくお願いいたします。先生、今日はどんなお話を伺いますでしょうか?
松原先生:在宅の心不全の話します。去年の12月ですね、榊原記念病院の方から東京都の心不全の講習会に呼ばれたのでいろいろ事例検討会で話してきたんですよ。その時に、認知症を抱えている患者さんで、心不全とにかく認知症は入院中は激しかった。そういう人が1年間自宅で過ごせたというその経緯について話してもらえないか。ということで、話をしてきました。もともとびっくりだったのは、その人の家に行ったときに、認知症全くないんですよ。入院中の経過をはじめ、病院の人から聞いたら、大変な騒ぎが起こった。と。認知症だったんですか?「そうなんですよ、逆に家ではそうなんですね」みたいな話になって。それからその人、クリームパン好きだって言うから。「俺さ、パン屋に並んでる焼き立てのクリームパンさ、テカテカしてるの見ながらさ、色々匂いかいで選びたいよ」って言って。
田中ヒロコ:美味しいですよね、焼きたて。
松原先生:退院して1ヶ月したらクリームパン買いに行けたんだけど、それからしばらくして9ヶ月ぐらい8ヶ月か9ヶ月して心臓ちょっと悪くなって息切れ出てむくみ出てきて、それは投薬で良くなったんだけど、また2、3ヶ月したらひどくなってきちゃって。心臓の収縮する能力が弱くて、強心剤使ったり酸素使ったり人工呼吸器使ったり・・・いろいろやって良くなっていくんだけど、また悪くなって酸素のつけ方も全然分かんなくなっちゃって。それで結局は家族がこれじゃちょっと・・・っていうことで入院されたっていきさつがあって。。。
結局そこで話したのは、病院と同じような近しいことやれば家にいれる期間が長くなるし、本人としてはすごく嬉しいだろう。でも家族の介護負担もあるから、そこら辺は見極めていけなきゃいけないんじゃないかって話してたんですよ。
確かにそうだよね。っていう話になって、医療従事者というか一生懸命やってあげたいなって思う立場になってくると、ガンガンに治療しようって思っちゃうとやっぱり家族も本人も疲れちゃう。ずっと点滴続けては治ると思うけど、ずっとつけるのはやっぱり強心剤の不整脈でちゃうからずっとつけるないかせいぜい3時間だけで。そういうのはどれくらいだったらできる?って言ったらはじめの頃は10日間連続だったけど一週間にいっぺんとかだったら自分は耐えられる。ってことで治療を選択してもらいながらやってた。結局本人も耐えられなくなっちゃってお家でやるのが。もう投げやりになっちゃって結局入院したら良くなった。でももう家じゃ見れない。施設に入らないと。
田中ヒロコ:そうだったですね・・・
松原先生:良かったなって思うのは、家で過ごせる時間提供をかけてれたのと、これは勝手に自分の思い込みかもしれないけど、ご家族自体も自分たちがここまで尽くしたんだということで、これ以上はもうできないと。もう何の後悔もない。って思ってくれたのかなって思ったんですよ。施設に預けている場合ってほぼ100%の家族の方って自分がなまけてるじゃないかと勝手に思っちゃうところが。。。全然そんなことないんですよ。みんな一生懸命頑張ってるんですよ。もっとできるはずじゃないかもっと何かできるはずじゃないかって勝手に勘違いしちゃって、自分も攻めちゃう人が結構多いんですけど。
田中ヒロコ:なんか分かる。
松原先生:あーすればよかった、あーすればよかった。でも実際はみんなはすごくよくやってる。社会生活営みながら。今回は在宅でここまでやって自分たちもその環境を提示して、自分たちも関わってここまでやってダメだったからもうお父さんは次はもう施設で我々も余力もないっていうのはご納得はしてもらえたかなっていうふうに思います
田中ヒロコ:やりきったっていうところですね。実際認知症があった方なんですよね。
松原先生:その人は心不全がひどくなって、息苦しいとか、むくみが強くなってくる。苦しい時に認知症が表出してくるっていう。
田中ヒロコ:そういうことなんですね。
松原先生:普段はそれほどでもない。クリームパンの表現なんて、見事なもので、聞いてたらクリームパン食べたくなってくる。
田中ヒロコ:私も先生から聞いてただけで、映像が思い浮かんで。
松原先生:その人の表現そのまま喋ってるわけで。
田中ヒロコ:自宅にいたらクリームパンも買いに行けたりしますもんね。
松原先生:時間的自由とか空間的自由っていうというのはあるんですよね。入院しちゃうと治療優先だからそんなこと言ってられない。
田中ヒロコ:どれだけ在宅で長く治療ができるか?っていうのも最終的にはその病院だったりとか施設であったとしても、家に長く居れる期間。実際長く居れる期間があった方が本人の生活の質は良くなりますよね。家がいいですよね。
松原先生:脳に与える負担とかも少ないじゃないですかね。例えば、どんな立派な宿に泊まっても家の方が物の勝手がわかっているし、楽じゃん。あくまでも旅行だから良いだけであって、自分の部屋に勝るものはないという。
田中ヒロコ:本当そうですよね、自分の部屋。私の父が救急車で運ばれて、入院して、そのまま亡くなっちゃったですけど、1、2ヶ月で。最初の頃は最後の時は電話もできなかったんですけど、電話した時に「何やってんの?」って言ったら、「ずっと天井見てる」って言ったんですよ。それがなんかもう未だに忘れられなくって、その天井を見てる状況をどうにかしてあげたいけど、どうにもできなかった。何年経っても思い出しちゃうのかなっていうふうに今思い出しちゃいましたね。病院にいると天井見てるしかないんで、「天井ずっと見てる」って言ってたのが。。。家の天井と病院の天井は違いますもんね。自分の部屋の天井の安心感と病院の部屋のっていうのは全然違うんだろうなっていうのが私でも想像ができるので。
長ければ長いほど在宅はできるっていうのが、この心不全の方っていうのは在宅ずっと最後までっていうのは難しいってことなんですか?
松原先生:心不全は結構難しいところがあるよね。家で最後まで成り立つケースっていうのは、基本息苦しいのが主ですけど、最後まで成り立つケースは「もう入院いや」って人。「絶対いや」って人。だいたい僕も頭の中で何人か思い浮かぶんだけど、一回直前に入院して帰るって帰ってきた人は基本は最後は家。「頼むから帰らせてくれ」
田中ヒロコ:本人の意思で。それで帰れる状態なんですか?
松原先生:うん病院の先生がかなり頑張って返して・・・
田中ヒロコ:あそういうことなんですね。
松原先生:だからそういう人じゃないケースの場合は心不全である程度症状が取れたりもするのでその場合は病院にまた行くこともありますね。
田中ヒロコ:「良くなって帰って、良くなって帰って」みたいな感じですか。
松原先生:そういうのを繰り返し。それはしょうがないと思うね。病気の性質上ね。結局、良くなるっていうことがある以上はちょっと難しいのかなと。ただ、患者さんには僕いつも選択してもらってるんだよね。3時間ぐらいしか点滴できないけど。病院だと24時間できるから。それは決定的に違うって。そしたら入院希望しますっていう人ももちろんいるわけだから。
田中ヒロコ:ご本人の体が辛くなっちゃうって事ですものね。
松原先生:実はよくなったケースもあります。それは次回お話します。
田中ヒロコ:わかりました。また次回楽しみにしております。