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腹水について② 2024年8月17日・24日・31日(土)放送分

まつばらホームクリニック

まつばらホームクリニック『ラジオ在宅NOW』!

この番組は、保谷駅から徒歩三分の場所に位置する、まつばらホームクリニックの松原清二院長に、日頃医療の現場で感じていらっしゃることをお話頂き、皆様にも在宅医療に対しての理解をより深めて頂ければと思います。

第一週と第三週に本放送、その他の週は再放送をお送りします!

【8月のテーマ】
『腹水について』

皆様是非お聴きください!!

西東京市を中心に患者さんの自宅に行き、診察をしている在宅医療専門診療所「まつばらホームクリニック」のホームーページはこちら→https://m-hc.jp/

↓放送内容を文字でもお読みいただけます!

田中ヒロコ:松原先生、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

松原先生:今日は腹水の処置についてお話 をしたいというふうに思ってます。この前は、例えば塩分控えましょうとか、利尿剤飲みましょうとかそういう話をしたと思うんですね。それでもやっぱり限界っていうのがあるのも事実なんですけど、そうすると症状がかなりひどい方の場合はお腹の水を直接抜くっていうことをします。

田中ヒロコ:やっぱり抜くんですね。

松原先生:そうですね。やり方としては、エコー、超音波をお腹に当てて、大丈夫だなっていうところを、見立てを立てて、腹水を抜くということをします。

田中ヒロコ:それは何か、針とかを刺して・・・?

松原先生:なるほど!そうですね大きさで言うと3~4ミリぐらいの中に鉄心の入った穿刺針があって、それをブスッと刺して、大体3リッターぐらい抜くようなこともやってます。

田中ヒロコ:3リッターですか?普通どのくらい入っているんでしたっけ?

松原先生:普通のだと50 mL 以下ですよね。

田中ヒロコ:それが3リッターぐらい・・・それ以上溜まってたりされるんですか?

松原先生:3リッター以上溜まってる方もいらっしゃる。

田中ヒロコ:いらっしゃるんですね。

松原先生:昔はね、患者さんのお腹の水を抜くときって、単純に針刺して水抜いてただけなんだけど、実は一緒に水抜くと、この前お話した血管の中のアルブミンがどんどんどんどん一緒に抜けてっちゃうもんだから、そうするとむくみやすくなっていくんですよ。
血管の中にアルブミンがあってアルブミンが水分保持する、それがなくなってくると、お腹の水が溜まりやすくなってて、患者さんが弱ってくるんですよね、見てると。

田中ヒロコ:逆にそれを取って、一瞬は楽だけど、また弱っちゃう?

松原先生:そうそう。数年前まで他の緩和ケアやってる先生とかの様子とか見ても、「最近はお腹の水って抜かないんですよ」みたいな話にもなってたりもしてて、それもありだよなっていうふうに思ってたりもしてたんですよね。ただそうは言いながらも、患者さんもお腹張ってつらいじゃないですか。

田中ヒロコ:あぁ~、そっか。

松原先生:弱っていく姿を見たくないっていうのも、当然だけど、一方で苦しいっていうのも事実じゃないですか。何とか方法ないかなっていうふうに思ってて、そこで最近ちょっと始めたのが、カート療法っていうのを始めたんですよ。何かっていうと、アルファベットの頭文字とってるんですけど『Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy』っていうことで、言ってしまえば余計な細胞を取り除いたり、濃縮した腹水をまたお腹の中に戻しましょうっていう話です。
もうちょっと言うと、お腹に針を刺して溜まった腹水を抜いて、細菌とかがん細胞とか、血球成分を取り除いて、アルブミンなどの有用成分が濃縮された腹水を点滴で戻しますっていう方法です。
そうするとアルブミンが体に戻っていくから、体にはいいかなというふうに思って、最近始めました。

田中ヒロコ:水を取っても、その水の3 L 取って3 L を戻すんじゃなくって、濃縮されてるから、量は減ってって感じでなんですかね?

松原先生:実際自分のところでやってみると、大体1回につき4000ccぐらい抜けてるんですけど、濃縮される量が回数によるんだけど、350から500~600。かなり濃縮されるんですよ。

田中ヒロコ:しかも、体にはちょっといい成分・・・。

松原先生:アルブミンが入ってるから、そしたら戻せるっていう意味があるかなというふうに思います。ただこれちょっと昔からある治療ではあるんだけどね、あんまり普及しなかったんですよ。背景としては、1回ろ過かけるんですけどね、結構時間かかるんですよね。腹水取って、我々の場合クリニックに戻ってきて、それを翌日に濃縮するんですけど、ろ過するときって、ろ過器の中のフィルターがあって、そこを通すんですよね。通すときにその白血球成分とか壊れちゃったりして、発熱の原因物質のサイトカインっていうちょっと難しい名前のものがあるんですが、それが漏れ出てきたりしてて、熱が戻したときに出やすくなると言われてるんですよ。そういうのもあるし、手間もかかるってことで、あんまり実は普及しなかったっていうのが現実なんですよ。

田中ヒロコ:ろ過するのもやっぱり時間がすごいかかる?

松原先生:かかりますね。かかるもんですから、機械を使ってろ過させる方法と、うちみたいに自然的でやる方法、場合によってちょっと時間押しちゃう場合は、スタッフが手で押したりとかすることもあるんですけれども、いずれにせよ少し圧を腹水にかけることによって、途中のろ過機のフィルターを通るときに、さっき言った炎症性のサイトカインが出てきちゃうと、熱が出やすくなっちゃう

田中ヒロコ:でもあえて、その方法に先生採用するっていうのはどうして・・・?

松原先生:何か例えば文献とか調べてみると、がんとかの場合炎症性だから、白血球成分がたくさんあって、サイトカインがたくさん出てきちゃう。それが発熱の原因になるってよく言われているのと、無理やりろ過機でバーって回すと、実はそれが熱が出やすいっていうのも言われてるんで、僕の場合は今のところ、がんの人やってなくて、肝硬変の人だけやってるんですよ。

田中ヒロコ:病状によって、大丈夫かなっていうことですね。

松原先生:そうすると、もう1回腹水を戻すっていうときに、解熱剤あらかじめ投与はするんですけど、結果的に熱出ないんですよ。だからこの考え方だと患者さん負担は少ないかなと思って今やってますね。

田中ヒロコ:へえ~、肝臓から作られるアルブミンっておっしゃってましたもんね。

松原先生:はい。

田中ヒロコ:それが濃縮されて戻して・・・やっぱり患者さんは、肝硬変の患者さんとかをそれ戻されて、結構体調良かったりとかあるんですかね?

松原先生:今やってる患者さんは、本当にね、すごいお腹なのよ。双子?っていうぐらいお腹張っちゃってるんです。

田中ヒロコ:じゃあ、ご自身もちょっと苦しかったりする?

松原先生:全くないんですよ!

田中ヒロコ:えぇ~!?そうなんですか?

松原先生:全くないんですけど、お腹に腹水が溜まりすぎてるから、地域の機関・病院で、お水は抜いてたんですけど、やっぱりおうちでやってもらったらどうだっていうことで、うちに紹介が来たんですね。おうちいくと、水は抜いてですねやっぱりペコンってへこむじゃないですか。
1週間後とか、普通に居間で座ってらっしゃるんで、ちゃんと座れるんだなっていう、そういう意味での生活の質を改善することはできてるというふうに思ってます。

田中ヒロコ:そっか普段溜まってしまう状態だと、座ることもあんまり・・・。

松原先生:ちょっとね、ずっと同じ姿勢ってのは大変なんじゃないかなと。

田中ヒロコ:そうですよね。

松原先生:間は大体2週間空けてやってますけどね。

田中ヒロコ:じゃあそれを繰り返し繰り返し・・・。

松原先生:やってます。本当はね間をちょっと開けたらね、患者さんにとってハッピーなんじゃないかなと思うんですが、2週間経っちゃうと、やっぱりドーンときちゃってるんで、その人・・・。

田中ヒロコ:2週間で結構溜まっちゃってます?

松原先生:戻ちゃってます。ただ何か文献とか見てみると、やっぱり腹水を1回抜いて、それから1ヶ月とか抜かないでいい人たちっていうのは、反応している分、いわゆる レスポンダーだって言われてる部分で、そういった人たちの方がより恩恵は大きいかなというふうには思ってますけどね。

田中ヒロコ:でも本当にラジオで先生がお話しするもの、次々次々いろんなものにチャレンジされてる。患者さんに合わせて。ご自身が受け入れる患者さんに合わせた治療をされてるんだなと思って、本当に改めて。すごいなって思います。

松原先生:患者さんが訴えてくる症状とか、そういうのを解決するのは、我々の仕事ですからね、。

田中ヒロコ:でも、どっちかって言ったらなんか自分がやりやすい医療に転ぶ先生と、先生みたいに患者さんの受け入れてっていう、みんなそうなんですか?

松原先生:僕はちょっと少数派かもしれませんけど(笑)やってる先生はここら辺だとカート療法は僕だけだから。

田中ヒロコ:そうなんですか。お話聞いてる限りでもすごく時間と手間がかかってらっしゃるっていうのが、私達素人でもわかるので。

松原先生:あとスタッフが支えてくれてますからね!

田中ヒロコ:素晴らしいですよね!本当にね!

松原先生:もうとても助かってます。

田中ヒロコ:本当です。もうラジオとしてみんなスタッフの人も本当感謝ですね先生。

松原先生:いつもありがとうございます。

田中ヒロコ:ありがとうございます!先生、本日も楽しいお話と、タメになるお話ありがとうございました。

松原先生:こちらこそ。