現在は山梨県在住の塚本将仁さん。
当時は川崎、そして西東京で長年保険代理店を営み、危機管理を生業としてきた立場から、コロナ禍をどう受け止め、どう行動したのか。
「正解が分からない」という感覚の中で揺れ続けた日々。
その経験が、いまの暮らし——そして稲作へとつながっています。
塚本さんのお話はここからお聞き頂けます(約11分30秒)
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“危機管理の仕事”だからこそ、動けなかった
現在は山梨に住んでいますが、以前は川崎、その前は西東京で10年間、保険代理店を開業していました。
コロナの話になりますけど、あれは本当に初めての経験でした。私たちも初めてですし、保険会社からも「代理店はこう動いてくれ」という通達は来る。でも、それが本当に正しいのかどうか、分からないままなんですよね。
まずは通達を守る。
でも同時に、個人としてどう考えるか。
仕事柄、どうしても「危機管理」という視点があるので、自分が火種になってはいけない。そう思うと、積極的に外回りをするのは極力控えるべきだ、と強く感じていました。
電話やオンラインでのやりとりが中心になりました。
「お元気ですか?」と画面越しに挨拶する。
どこか違和感を覚えながら、業務を進めていましたね。
“来ないでくれ”と言われる仕事
身内が罹患したり、インフルエンザが流行したり。感染症がとても重く扱われていた頃は、「極力来ないでくれ」と言われることもありました。
外商の一人として、それは精神的に本当にきつかったです。
交通事故などの有事の現場に本当は行きたい。でも行けない。
「自分じゃなくてもいいじゃないか」と自分を追い込む。
それまで20年、30年続けてきた自分のスタイルが貫けない。
自分の価値観はこれでいいのかと、毎日天秤にかけているような感覚でした。
今振り返っても、「これが正解だった」とは言えません。
雲の中にある答えを探しているような、そんな感覚ですね。
家族の介護と、やり場のない憤り
辛かったことの一つは、介護が必要な家族の存在でした。
病院に行くべき日に、「今日は来ないでください」「見合わせで」と言われる。重要度が変われば対応も変わる。価値観も変えなければならない。
でもそれは、自分ではなく家族のことです。
「ちょっと待ってよ。じゃあどうすればいいの?」
やれることをやってください、と言われても、
今までの対応は何だったのか、これからどうすればいいのか。
あのときの感情は、辛いというより、憤りに近かったかもしれません。
罹患、ワクチン、副作用——正解のない選択
自分自身も、コロナとインフルエンザの“ハイブリッド”で罹患しました。検査したら両方出た。
あれは本当にきつかったですね。
でも、それ以前にワクチン接種の副作用もつらかった。
「3回目を受けないと入れない現場もある」と言われる。
打てば副作用で仕事を休むかもしれない。
打たなければ仕事の現場に入れない。
正解は分からない。
結局、3回目は受けませんでした。事情を説明して、「これでダメなら仕方ない」と伝えました。その後規制が緩和され、受けずに仕事は続けましたが、あの判断は本当に悩みましたね。
もう、あの辛さは経験はしたくないです。
家族で乗り越えた時間
家族で話し合う時間は確実に増えました。
感染者が出たらどうするか。隔離はどうするか。
励ますにはどうしたらいいか。
――具体的には?
食欲があるなら何が食べたい?と聞く。
普段のスーパーにないなら、宅配は? 今日中に届くところは?
そうやって情報を探して、買って、枕元に置く。
それだけでも喜んでくれる。
看病をしながら、そういうシステムを使いこなしていく。
早く回復してほしい、という一心でした。
あの時間は、家族の頼もしさを感じた時間でもありました。
「任せても大丈夫だな」と思えた。
将来、何かあった時にも頼れる、少し頑張れるかもしれないと感じられた時間でした。
一人では感じられない力強さを、家族がいることで感じましたね。
次に同じことが起きたら
――また社会が大きく変わるようなことが起きたら?
まず、「何が正しいか」は人によって違うということ。
仕事、家族構成、生活環境——それぞれ違う。
省庁の通達は最大公約数でしかない。だからこそ、その中でどうアレンジするかを、自分で決めることが大事だと思います。
人のせいにしない。
守るべき指針を守りながら、自分なりに選択する。
それを前提に、次は動く必要があると思っています。
なぜ、いま稲作なのか
そして、もう一つ。食事です。
困った方も多かったと思います。
私はいま山梨で稲作をしています。6年目か7年目になります。
食べるものを、自分で少しでも作れるという安心感。
災害備蓄とは別に、普段から生産者として何か一つでも作っておく。
庭で一品でもいい。
「これは食べられる」というものがあることが、安心感になると思うんです。
自分や近しい人を守るために、作り方を知っておく。
だから、いま稲作をしています。
自分に合うエネルギーは何か。
何を食べて生きていくのか。
それを考えて、近い場所で作ってみる。
それが、いざというときの下支えになると、強く感じています。
ありがとうございました。

