近年、大地震や豪雨水害の発生が相次ぐなか、市民にとっても「防災・減災」は非常に身近な話題となっています。以前と比べ、防災の知識に触れることが増えていますが、わたしたちは覚えた知識をマニュアル化してはいないでしょうか?
この番組では、四季に合わせた「防災・減災」のトピックをあらゆる視点で紹介します。
パーソナリティーを務めるのはアウトドア防災ガイドのあんどうりすさん。
アウトドアで出会ったスキルを楽しくわかりやすく話してくださいます。
アウトドアって大変そう…防災って難しそう…そんなことないんです。
気がついたら防災の知識が身についていた!そんな時間になるはずです。
第68回となった今回のテーマは
「水害後の “子どもたちによる” 清掃活動」
梅雨の終わり頃は大雨が多いといわれています。
今月上旬には熊本を中心とした九州、岐阜、長野などでも豪雨による被害が発生しています。
被災した各地ではボランティアの方も入り、片付けが行われています。
今回の放送では、水害後の清掃活動について。子どもたちは参加させたら危ないという話をお伝えします。
実はこの話、インターネット上で非常に「バズった」のです。
そもそもの話の発端は昨年に遡ります。
詳しくはラジオライブラリーをお聞きください。
音声をお聞きいただきながら、文字で情報やデータをご確認ください。
放送音源
文字情報
きっかけは「感染症リスクから子どもたちを守りたい!」という思い
今週は、水害後の「子どもたちによる」清掃活動についてのお話です。
最近、各地で水害が増えてます。
水害後、復旧に向けて片付けをしますよね。
それについて、こんなことがネットで話題になりました。
「清掃活動に参加する子どもたちの服装が、体操服のままだったり、学校の制服のままだったり…これって軽装すぎるんじゃないの?」
たくさんの方が、こんな声を見たり、聞いたり、テレビでも報道されてたりていたと思うんですけれども。
実はこの問題、元々は私が言ったんです!と言うと偉そうですが(笑)
そもそもは、昨年7月7日ぐらいのこと…
長野県佐久市の一般社団法人佐久医師会が主体となって制作した
「教えて!ドクター」というアプリをご存じですか?
このアプリを使い、医学情報を発信している「教えて!ドクタープロジェクト」のプロジェクト長を務める、小児科医の坂本昌彦先生に話してみたんです。
昨年この番組にも電話にてご出演いただきましたよね。
坂本先生に伝えました。
「水害の後、子どもたちが普段着のような軽装で清掃を行ってるけど、災害後のボランティアの皆さんのしっかりした装備とは全く違う。子どもたちの感染症へのリスクが心配です」
って。
大人のボランティアも完全装備
これまで、清掃活動中にどこかに釘が出ていて傷を作り、そこから感染して破傷風にかかったという方もいるんです。
なので、大人のボランティアの皆さんは装備をしっかりしています。
- 感染症へのリスクを考えたら長靴は当然!
- 長袖、長ズボン、そしてヘルメットをかぶる!
- 目にはゴーグル、マスクもして(新型コロナウイルス感染拡大の前から)
- 首にはタオルを巻いて、泥もつかないように!
- 手にはゴム手袋!
大人はそんな重装備で、夏でもやっているというのに、なぜ子どもたちは大丈夫なんでしょうか?…ということが防災の世界で問題となっていると、坂本先生は知ってくださいました。
その後、水害後の感染症について書かれている様々な論文をちゃんと調べてくださったんですね。
アメリカの小児科学会の見解が!
そうしたらその中に、アメリカ小児科学会の見解が書かれていたんだそうです。
アメリカ小児科学会の見解によると、十代以下の子どもたちというのは、水害後の清掃活動に参加させるべきではないという…「言い切り・断定」だったんですね。
そして、こんなこと書いてるよ~!言い切っているんですね!なんて坂本先生と言葉を交わしました。ふたりで話していたのは、やっぱり子どもたちを守りたいよねってところなんですよね。
感染症とひとえに言っても、破傷風だけじゃなくって、例えばネズミの死骸が流れてくるということもある。
普通はあまりかからない、レプトスピラ症とか、淀んだ水の中にレジオネラ菌が含まれていたりとか、そういった問題をアメリカ小児科学会も指摘していました。
その他、環境に影響を及ぼす農薬とか劇薬物ってのも、流れてくることもあるんです。危険ですよね。
すぐに発信したものの、反対意見も
新型コロナウイルスではそうではないって言われてますけど、子どもたちは大人よりも感染症かかりやすいと言われています。
子どもたちを守ろうという話がアメリカでは強いんだね。
それはちょっと発信した方がいいんじゃないかね?と話していたら、すぐ、坂本先生がツイッターでそのアメリカ小児科学会のことを紹介したんです。昨年の7月9日のことでした。
すると、坂本先生はいろんなところで医療にかかわる記事書いてるので、ネットニュースでもこの話が出てきたりするわけです。
「小児科医が警告、水害後の片付けに子どもを参加させないで」
そうすると、大方の反応は
「そうだね、やはり大人のボランティアとは違うね」という賛同するものだったんです。
ただ、中にはまあまあの数としてあった意見は、
「やっぱり教育的に子供達は掃除させないと!」
「掃除をさせないなんて甘やかしすぎじゃない?」
こんな意見もあったんですね。
そして昨年の10月に大きな被害を引き起こした台風19号の時です。
首都圏のとある学校で、「子どもたちも清掃活動に参加しましょう!」なんて動きがあったんだそうです。それも軽装で!
その時に生徒の保護者が「水害時はこんなことも言われてますよ」って私が書いた「水害後の清掃活動は子どもにさせるべきではない」というような記事を学校に見せてくださったそうなんです。
米国小児科学会はどのように述べているのでしょうか?
アウトドア流防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
タイトルは、「洪水やハリケーンの影響を受けた地域への子どもの帰還に関する臨床医の勧告」とあります。
ここでは、子どもたちは大人に比べて毒性への感受性が高いことや、成人だったら避けようとする物質に直接触ってしまう行動をとりがちな事が挙げられていて、小さな子どもはもちろん、できれば10代のうちは清掃活動に参加すべきではないことが書かれています。
清掃に参加すべきではないとはっきり書かれていることも印象的ですが、他の箇所で、清掃されていないエリアには子どもは近づくべきではないとしたり、結論として、子どもたちは、地域の清掃が終わってから被災地に戻る最後のグループであるべきだと提言しています。
水害後の子どもの清掃、NGのワケ より
でも、まだ昨年の10月の段階では、この考えが主流じゃなかった。
受け入れられなかったんです。
多くの力により「常識」として受け入れられた
ところが、今回の水害後に潮目が変わった。
私と坂本先生は1回ぐらいしかこの話題を発信してなかったんです。
でも、もう、発信する前に取材がやってくるという状態。
あちこちでお医者さんや専門家の方が、水害後の子どもによる清掃活動は NG だよって言ってくださって。その話がどんどんと広がりました。
ですので「ちょっとおかしいな」と感じたことが、小児科医、あらゆる分野の専門の人と繋がって発信を始めると、こんなに広がって、あっという間に「常識」に変わるんだなということを体験し、すごく感動しました。
例えば、防災の情報、「大地震で倒壊するリスクがあるから、ブロック塀を撤去しましょう」と言い続けていることは全然広がらなくて、正直虚しく感じることも多いんです。
でも、この話題に関しては皆さんが積極的に取り組んでくれたおかげで、子どもたちが安全になる。そして大人の皆さんも、ちゃんとした格好・装備でお掃除しましょうということが広まった。
そういった大切なことを伝えていけたらいいなと思っています。
ということで。
皆さん広めてくださって、どうもありがとうございました!
あなたからのメッセージをお待ちしています!
今回は、水害後の清掃活動についてお伝えいたしました。
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