まつばらホームクリニック『ラジオ在宅NOW』!
この番組は、保谷駅から徒歩3分の場所に位置する、まつばらホームクリニックの松原清二院長に、日頃医療の現場で感じていらっしゃることをお話頂き、皆様にも在宅医療に対しての理解をより深めて頂ければと思います。
第1週と第3週に本放送を、その他の週は再放送をお送りします!
【4月のテーマ】
『在宅医療とラジオについて』
皆様ぜひお聴きください!!
西東京市を中心に患者さんの自宅に行き、診察をしている在宅医療専門診療所「まつばらホームクリニック」のホームページはこちら→https://m-hc.jp/
↓放送内容を文字でもお読みいただけます!
田中ヒロコ:では松原先生、本日もどうぞよろしくお願いします。
松原先生:よろしくお願いします。
田中ヒロコ:先生、前回はラジオについて思いを語っていただきましたが。
松原先生:今回は「ラジオでエールを送ろう」それがテーマです。
田中ヒロコ:エールを送ろう。
松原先生:「入院患者さんにエールを送ろう」という言い方のほうが正しいと思います。
10年来、付き合いのある患者さんなんですけど、仮にKさんとしましょう。
Kさんは50代男性の方で、肺がんで骨に転移していて、それで脊髄転移もあり、両足が動かないという方なんですけど、その方、今回床ずれがひどくなっちゃって入院したんです。
すごく入院嫌いな人で、お話聞くとそうかなあというのは分かるんですけども、とにかく入院すると自分が自分でいられなくなるということなので、なるだけ日頃のKさんとの思い出や、エールや、僕の思いなどを伝えられたらなというふうに思っています。
田中ヒロコ:Kさんが入院していると先生は会えないんですよね。
松原先生:会えないですね。
とても面白くて陽気な男性の方で、今の時代NGかもしれないんだけど、結構忙しくて昼ご飯を食べる暇もない時が仕事上たまにあったりするんですけど。
そうするとうちのスタッフにKさんが「どう、忙しい?」って言うと、「ちょっと忙しいです、お昼ご飯食べる暇ないくらいです」というふうに答えたんですよ。
そしたらそのKさん、「バナナとかむいて食べればお昼ご飯になるでしょう」とか言ったりしてたんですよね。それで、Kさん「俺は絶対そんなこと言えないよ」とか言って(笑)
今の時代ちょっとどうなのかなと思いながらも、サラッと言っちゃうところがおもしろいなという。
田中ヒロコ:Kさん…。そうなんですね。でもなんか明るい方ということですよね。
松原先生:本当にあと面白いのが、家族中が調子悪いなあという時があって、Kさんが家族に「お前らだらしねえなあ」とか言って、その程度で病気になるのかっていう話をしてたら、家族に「お前が病人じゃないか」とか言われて…。
田中ヒロコ:それすごい家族あるあるですね~。
松原先生:その人ね、面白いなあこの人って思うんだけど。
田中ヒロコ:でも、家族の方もそうやって気兼ねなくというか、気を遣わずお話できる間柄ということですよね。Kさんのお人柄もあるかと思うんですけど、言っても大丈夫みたいな感じの・・・・。
松原先生:でもその人いろいろ本当に教えてくれて、我々医療従事者の欠けているところというのもあって。
青木くんも言っていたんだけど、在宅診療でお医者さん来るときにどういうふうに待ち受けしていればいいのか、準備とかどうしたらいいのかという質問があったんだけど、Kさんは本当にそういうようなことを仰っていて。
どういうことかと言うと、お医者さん(お客さん)が来る時に、何でもいい格好じゃないんだと。やっぱりそれなりに準備もしなきゃいけないし、例えば自分たちの生活リズム、お風呂があったりご飯があったりということもあるからそれなりの心構えもあるし、部屋もある程度きれいにしておかないといけないし。
ということで、心構えがどうしてもあるから、ある程度きっちり時間を守ってほしい。
うちの場合2時間枠なんだけど、その枠内でやってほしいという話をしていた時には、「患者さん家族ってそういう気持ちなんだなあ」というのは結構教えてもらえることもありました。
田中ヒロコ:やっぱり、きちんと伝えてくださるという。
松原先生:自分の言葉できちんと教えてくれるということだよね。だからさっきのように冗談めいたことをおっしゃることもあれば、自分の言いたいことはきちんと言えるっていうような人。
それで、一回かかとの床ずれができたときに、結構深かったもんですから、骨のところまで行っちゃったことがあって、それで入院するって話したときにちょっと嫌がってたんですけど、でもこのままじゃなあということでまあ一回入院してもらって。
結局やっぱり入院辛かったんでね。入院辛くて、ある程度処置したら「もう頼むから家に」と言って家に帰ってきて。
1年ぐらいだいぶ良かったんですけど、それからやっぱり残念ながらちょっと床ずれがひどくなっちゃって、またご入院されたというケースがあるんですよね。
でも、Kさんの気持ちを考えるとなんか本当に、本当に辛いんだろうなあというか。
田中ヒロコ:Kさんは入院はなんで嫌なのですか?
松原先生:病気をしている人、いわゆる病人って、動ける人と比べて不自由を感じることが非常に多いし、それを一つ一つ言葉にすること自体が多分ためらいもあるし、頼むのも多分ためらいもある。だけどできないこともためらいがある。
自宅だと、ためらいに関してはご家族にためらいもなく言うことができるし、そういうのが非常に家のほうがいいという感覚だと思うんですけど、病院だとそれが全くできない。
田中ヒロコ:完全にアウェイですね。
松原先生:アウェイ。もちろん、病院は病院で否定する気も全くないんだけど、効率的に医療するという意味ですごく良いところだと思うんだけど、ただマンツーマンで付いているわけじゃないから、困ったなあと思ってナースコールを鳴らしても現実問題すぐに来れるというものでもないから、それが積み重なると結構辛いだろうなあというのは思うんですよね。
田中ヒロコ:で、今Kさんは・・・?
松原先生:まだ1ヶ月以上入院しています。
田中ヒロコ:今されてらっしゃるんですか?
松原先生:しています。
田中ヒロコ:Kさん元気ですか?元気かなどうかな?
松原先生:本当に、そうなのよ。だから、なんとなく毎週決まった曜日に往診に行っていて、まだ診察のリストに載っていないんだと思うと、ちょっともの寂しく感じて、あと大丈夫かなというふうに思ったりもするんですよ。
田中ヒロコ:先生も(Kさんが)入院されると、毎週毎週見ていらっしゃった患者さんに会うことができないから、状態というのはやっぱり分からない感じ・・・?
松原先生:奥さんが、この前クリニックに来たりとかいろいろ教えてくださったりっていうのがあるんだけれど、でもやっぱり本人に会えてないし入院がすごくしんどいという人だから、大丈夫かなあというのが常にあります。
田中ヒロコ:そうなんですね。それで先生も、いつもそういった心配を・・・。
松原先生:それはあるし、あの人と接しているとこちらが元気になれるところがあってね。さっきのバナナの話とか、俺は言えないなと思いながらもサラッと言っちゃうところとか、すごいなあこの人みたいな。
田中ヒロコ:笑
松原先生:そういうスカッと笑わせてくれることとか、色々教えてくれるんだよね。なんか本当に会いたいなあというのを僕も思っているんですよね。
田中ヒロコ:本当ですね、私も少し会いたくなってしまった。お話伺うと、なんかそうですよね。でもやっぱり顔見たいですよね。
松原先生:本当そうなんですよね。だからちょっと自分ではどういうことで、その応援できるかなあというふうに思っていて、とにかく元気になって会いたいよっていうところが一つと。
田中ヒロコ:そうですよね。はい。
松原先生:あとは、すぐに在宅で医療できるレベルだといつでも待ってるよっていうところと、そんなところは本当に自分の中ではありますね。
田中ヒロコ:Kさん聞いてますか?
松原先生:それで、昔奥さんから聞いた話なんですけど、マイケル・ジャクソンを聞いてたと言うんですよ。
田中ヒロコ:はい。
松原先生:だからマイケル・ジャクソンで、Kさんに一番いいのは何かなっていう風に自分でこう(思って)、僕昔マイケル・ジャクソン聴いていたんで。
田中ヒロコ:世代ですよね、私もそうです。
松原先生:バットとかスリラーとか。
田中ヒロコ:はい、世代です。
松原先生:そんな中で何の曲がいいかなと思って、「You Are Not Alone」という、「あなたは一人じゃないよ」というとてもいい名曲があるので、この曲を聴いてもらえたらなというふうに思います。