りす:本日は、信州大学工学部建築学科で、建築環境工学をご専門にされている中谷岳史先生にお越しいただいています。
中谷先生、よろしくお願いします。
中谷先生:はい、よろしくお願いします。
今日はお時間いただきまして、水害の対応、建物が水に沈んでからどうするか、それについて情報提供をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
りす:はい、ありがとうございます。
近年、大地震や豪雨水害の発生が相次ぐなか、市民にとっても「防災・減災」は非常に身近な話題となっています。以前と比べ、防災の知識に触れることが増えていますが、わたしたちは覚えた知識をマニュアル化してはいないでしょうか?
この番組では、四季に合わせた「防災・減災」のトピックをあらゆる視点で紹介します。
パーソナリティーを務めるのはアウトドア防災ガイドのあんどうりすさん。
アウトドアで出会ったスキルを楽しくわかりやすく話してくださいます。
アウトドアって大変そう…防災って難しそう…そんなことないんです。
気がついたら防災の知識が身についていた!そんな時間になるはずです。
音声をお聞きいただきながら、文字で情報やデータをご確認ください。
文字情報と合わせてラジオライブラリーもお聞きください。
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文字情報
水害対策/対応について
りす:中谷先生は、2019年の東日本台風の時に長野のご自宅が被災されて、そこから水害対策の具体的な手順復旧の最適化についてご研究されているという事なのですが、実際にご自身が被災された時の体験談を教えていただけますか?
中谷先生:はい、ありがとうございます。
2019年の東日本台風の時に私が住んでいる家が床上30cmほど被災しまして、被災した後が結構大変だというとに気づきました。
例えば、掃除が大変なだけではなく、様々な手続きなど色々なやらなくちゃいけないことがありますので、これらを整理して、水害被害にあった人の負担が出来るだけ少なくなるように、その工程を何度も何度も作って、改善して、そういったことに取り組んでいます。
りす:はい、それまでは、ボランティアの方々のノウハウに頼っていたところを、先生がきちんと科学的に解明するということに取り組まれているという事なんですよね。
中谷先生:そうですね。自分が被害を受けたことで、国内・国外の様々なマニュアル読んだのですが、部分的には使えるけれど、この部分はわからないな、そういったことがありました。
そこでいろいろな学問や情報を組み合わせて、実際に使えるようなガイドラインを今作っております。
りす:はい、私もガイドライン作る時に先生をちょっと頼らせていただいたのですが、全国各地の被災された方からの助けてという声にもお答えされているということで、実際何件ぐらい被災したお家の復旧に関わられたのでしょうか?
中谷先生:自分の家を含めて、本当に被災した直後から完全に直るところまでの約1年間を完全にフォローしたのは、7件になります。
部分的に技術提供や資機材提供などを行ったお家は100件以上かわからないぐらいあります。
実際に水害に被災されてわかったこと
りす:中谷先生ご自身が被災された時の具体的なお話を教えてください。
中谷先生:恐らく私の研究の原点と言えるのではないかと思うのですが、「これは、いまだったらやらないな」というような「やらかしてしまった」ことがいくつかあります。
例えば、「処分する必要のある家財を自分でごみ処理場に持っていく」ということが挙げられます。
家の荷物を外に出し、その荷物を廃棄物処理場に持っていく、この一連の作業をすべて自分でやりました。
実際これが結構気持ちいいんですよね。
「今、捨てて復旧に向かっているぞ!」と思うのですが、被災してしまった自宅は自分で直さなければいけませんので、本来はその家の住民は家に居て、いろんな指示や判断をするべきなんですね。
ですので、そういった実際の作業を伴う力仕事は外部の人に任せましょうと、現在では呼び掛けています。
私自身、自分でゴミ捨てを頑張ったせいで、ものすごい背筋痛になってしまい、その後動けなくなってしまいました。
「力仕事はすべて外部の人に任せる」ということが、一つ目になります。
りす:なるほど大事ですね。他には何をやらかしましたか?
中谷先生:自分の家を傷つけるというか、手をかけるということに躊躇し、2週間置いてしまった結果、壁一面にまるで油絵のようにカビのようなものが生えてしまいました。
やはり今まで暮らしてきた、自分にとって愛着のある家なので触れることが出来ませんでした。
日本の住宅の壁の下地には、よく石膏ボードが貼られています。
石膏ボードの石膏自体は無機物なのでカビが生えることはないのですが、その両側についている壁紙やクロスの糊、木材などは有機物の塊ですので、こういったものに大量のカビが発生してしまいます。
内装解体によって物理的に取るというのが、当時なかなかできなかったということもこの原因でした。
りす:他にもありますか?
中谷先生:そうですね。家の物を捨てることもなかなか出来ず、子供が小さい頃遊んでいたおもちゃをなかなか捨てることができませんでした。
ただ、横に置いておいて2週間ぐらい経つと心の整理をすることが出来ました。
このように、「すぐ捨てるもの」「ちょっと時間を置くもの」と2か所に分けると良いかと思います。
りす:気持ちを反映したフロー図も作っているんですよね。
よく災害ゴミとか言われますが、やっぱり被災した人にとっては、すぐにゴミと考えることはできないですよね。
このようなこともあり、この研究に取り組まれたという事なんですね。
中谷先生:そうですね、よく災害っていうとそれは被災地だと思ってしまいますが、そこには元々人々が普通に暮らしてた日常があったことには違いないので、そういった方々の気持ちなどを大事にしたガイドラインを作るようにしています。
災害後に必要なこと!
りす:はい、リスナーの皆さんももし被災したらどうすればいいのかなと考えることがある思いますので、災害にあってからではとても大変なので、どのような流れで対応していけばいいのかというフローを知っていただきたいと思います。
では、被災した直後、水害にあってしまった時には何をすればいいのでしょうか?
中谷先生:はい、水害前のタイムラインという言葉を聞いたことはありますか?
警報が出たら逃げましょうとかそういったことが書いてありますが、私が研究で取り組んでいるタイムラインは水に沈んだところから始まるタイムラインです。
まずはちょっと概要だけ伝えたいと思います。
まず被災中と被災直後、そして応急処置復旧工事、このようなステップで整理しています。
被災中は情報収集だけに留めて、あまりジタバタしないという事が大事です。
被災直後は様々な情報を整理することが大事になってきます。
室内や屋外の安全を確認して被害の記録をし、外から手伝いを呼ぶために現地の動線確保をします。
例えば通り道を綺麗にする。このようなことを行うのが被災直後になります。
被害の記録という点でいえば、4方向を撮影することが大切です。
特にこれは保険会社や行政に提出する資料の基本になっています。
屋外4方向、室内もできるだけ4方向を撮ると良いです。
外部の支援を大工さんやボランティアさんに対して出すことはとても大事なのですが、被災状況は話だけ聞くという事では、あまり伝わらないことがありますので、動画で外をグルリと歩く、室内だったら部屋の中央でゆっくりグルリと回す、次の部屋に行ってグルリと回すというように撮影した動画がありますと、どんな状況か一目瞭然、技術のある専門家でしたらすぐ理解できますので、この撮影方法をおすすめしております。
りす:動線確保と先生おっしゃいましたが、濡れた家財などを外に出して、どれを捨てるのかどれをとっておくのか、どれを洗うのかということも考えなければいけませんが、その出入りのときに玄関にたくさんものが置かれていたら大変なので、動線を確保するという認識であってますか?
中谷先生:そのとおりですが、実際被災地に行くと廊下も部屋中、薄い細かい泥が乗っかったような状態です。そこをよくサンダルやスリッパのような履物で作業する方がいるのですが、それで転倒するということが多発します。特に段差を降りた瞬間にズルッとコケて、手をついて腕を折る。そういった高齢者の方をよく被災地で見ますので、まずは通り道を綺麗にしましょうということを指導しています。
すぐやるべき5項目!
りす:はい、その後重要な応急処置になるんですが、これが大変とお聞きしました。
中谷先生:はい被災直後行う必要があることは5つあります。その5項目を一気に行う必要があります。
水害のまず一つ目の関門ですが、よく行政の対応のことが話題になりますが、水害は「住宅が被害を受けた災害」になります。
この住宅は、住人の財産ですので、住民の方がご自身で助けを求める、申請するなどすべて住民の方が全てやらなければいけません。これがとても大変なんですね。
ここで登場するのが被災直後に同時に行う必要がある対応、5項目です。
1つ目はまず家の片付け
2つ目が建築会社への依頼
3つ目が行政の手続き
4つ目が建物の保険会社の連絡
5つ目が車の保険会社の連絡
これらをいち早くやる。
これが1つ目の大変なことになります。
りす:なぜ、この5つを同時に急いでやらなくてはいけないのですか?
中谷先生:まず建物のことですが、多くの人の手を借りて建物の掃除や片付けをし、建築会社に修繕を頼む。
この2つを急いで取り組むことで、1か月半から2か月で応急処置が完了し、建物のダメージが減ります。
残り3つ、行政・保険会社関係ですが、こちらによっていくらお金がもらえるか、そしていくらお金が出ていくのかという事がわかります。お金を整理して、そして自分の貯金やローン借り入れ、こういったことを整理することを進めることが出来ます。建物に残ったダメージ、災害によって出入りしたお金、そして貯金、これらを整理して建築会社に復旧工事を頼む、こういったことを計画的に行うことが、水害の復旧ではとても大事なことになります。
りす:ありがとうございます。
さて、ここから本格的なお話をお聞きしたいと思うのでうが、続きはまた次回ということで、まずは皆さん被災直後に同時に行う必要がある5つの事、滑ってケガをしないように動線確保に取り組むということを覚えておいて頂ければと思います。
本日は信州大学工学部建築学科中谷岳史先生にお越しいただきお話をお聞きしました。
中谷先生:ありがとうございました。
りす:ありがとうございました。
あんどうりすの防災・減災 りす便り
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