ラジオはFM西東京! FM++(プラプラ)のアプリでもラジオが聞けます!

病診連携について① 2024年3月2日・9日(土)放送分

まつばらホームクリニック

まつばらホームクリニック『ラジオ在宅NOW』!

この番組は、保谷駅から徒歩三分の場所に位置する、まつばらホームクリニックの松原清二院長に、日頃医療の現場で感じていらっしゃることをお話頂き、皆様にも在宅医療に対しての理解をより深めて頂ければと思います。

第一週と第三週に本放送、その他の週は再放送をお送りします!

【3月のテーマ】
『病診連携について』

皆様是非お聴きください!!

西東京市を中心に患者さんの自宅に行き、診察をしている在宅医療専門診療所「まつばらホームクリニック」のホームーページはこちら→https://m-hc.jp/

 

 

↓放送内容を文字でもお読みいただけます!↓

田中ヒロコ:では松原先生、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
今日はどのようなお話を伺えますか?

松原先生: 基本的に在宅診療って病院と診療所との連携、”病診連携”で成り立つんです。そういったことについてお話ししたいというふうに思います。

だいたい在宅医療に入る患者さんというのは、病院である程度の治療をして、その病院で治療をする間のインターバル、例えば抗がん剤治療だったら 1 回目の抗がん剤治療をやって 2 回目の抗がん剤治療をやってその間を見てほしい。とか。
あとは心臓のことで心不全で調子が悪くなって息苦しくなることが最近頻回だから、外来通院だけだとよく見れない。なのでちょっとお家でもマメに見てほしいということで、病院から診療所に依頼が来る”病診連携”っていうのがあります。

世の中の仕組み的には基本はそういう風になってるんですが、ただ病院って結構いろんな種類の病院があって、まずは脳梗塞になりました、とか心筋梗塞になりましたという、いわゆる急性期の病院っていうのがあります。
また、病院で治療が終わった後、リハビリが必要だよね。っていうことで、回復期を中心に考えて転院してもらってリハビリをしてもらうという病院があります。
その回復期のリハビリで約3 ヶ月ほどやって、良くならない方、よくなる方、それはそれぞれなんですけど、その後の生活の場ということで自宅もしくは施設っていうような選択になるんですよね。

田中ヒロコ:そうですね。うちの親もまさにそんな感じで手術終わったら、”はい出てください。リハビリの病院です。”みたいな。
やっぱりそれぞれの分野で病院を変わりました。

松原先生:在宅診療で割合として多いのが、その急性期病院からの直接の依頼ということが結構あります。抗がん剤治療でなかなか良くならなかったり、”外科治療がもうこれ以上できないよ。”っていうような患者さんで、痛いとか苦しいとか。 そういった時に、麻薬とかを頻回に調整してほしいという要望がある。
あとはご自宅の方で酸素とか導入して患者さんの苦痛を取って欲しいというようなことで、緩和医療を中心とした医療を求められたりします。

心臓とかでも、やっぱり調子が悪くなって息苦しくなったり、全身がムクムクにむくんだりして、そういう時は利尿剤というのよく使うんですけど、そういった注射を使ったりして生活の質を良くしてあげる
というようなことで依頼がありますね。

田中ヒロコ:病院ってずーっといることってできないんですよね。

松原先生:昔はできたんですけどね。そこら辺は昔からの反省点として、ずっと病院に入院しちゃうと足腰が立たなくなっちゃうし。あとは物忘れとかも結構進んじゃう
本来入院期間が短ければそういう風にはならなかったはず。なんだけれどもそうなってしまった、ということで。
そういったことに対しての社会の反省と、あとはたくさんの患者さんを役割分担して効率よく社会が見ていくような仕組みに世の中が変わってきていて、期間も限られてきている。

田中ヒロコ:先生もやっぱりそういった病院から紹介されて診たりとか?

松原先生:そういう割合は多いですよね。
それが意外に難しくて。何が難しいかっていうと、患者さんは一人しかいないけど、お医者さんは複数人いるわけですよ。
例えば病院には病院の主

治医の先生がいる。在宅には在宅の主治医の先生がいる。もちろん外来になれば外来で外来の主治医の先生がいる。そうすると、色々な先生がお互いに患者さんの病状について話をして、そこで方針を伝えてどういう風に治療をすすめていくかっていうことを決めるわけなんです。

例えば患者さんが、病院の先生とはこういう風に話をしたけれども、実はそこまで大切なことだと思ってなかったとか。病院でしっかり説明しましたよっていう話を聞いても、患者さんやそのご家族にとって難しいのが、人間都合の悪い事って耳に入らないこと、頭に入らないことってよくあるんです

田中ヒロコ:すごいわかります。

松原先生:人間の性格かなというところではあるんですけど、それで病院が、「説明の義務を果たしました。」でも患者さんは、「聞いてません。」という状態の方が在宅に来ることもよくあるんですよ。

田中ヒロコ:正しく病状とか伝えられているはずなのに、違う事を言ったり?

松原先生:うーん、正しいことを伝えられているのに、そもそもそんなこと言われてない、とかですね。
自分にとっての嫌なこととかを拒絶するっていう意味で記憶から消し去られてしまうというか。

田中ヒロコ:うちの母親も乳がんの手術を夏にしたんですけど、乳がんじゃなかったって言ってます。「胸取ってるよね。」って言っても、「なかった。」って・・・

松原先生:結構”人”って難しくて、説明を医者がして、患者さんも同意をして外科的治療をする、もしくは抗がん剤だったり。そういったケースってお互いが了承してるものだとして通常やってるわけなんです。
ところが患者さんってそうじゃないんですよね、必ずしも。

自分の体の中で起こっている大きな病気の出来事を抱え込めない。だから、やっぱり否定に入っちゃう。もしくは忘却に入っちゃう。
なのでそこからセカンド主治医、引き継ぎの主治医として受けたりすると、「話どうなってんのかな、これ?」って思う事は往々にしてあるんです。

ここで重要なのはご家族で、ご家族に対して引継ぎ前の先生、もしくはその先生を囲んでくれてる看護師が症状について「患者さん家族にも言いましたよ」って話になってるんだけども、家族としては「聞きましたよ。そうですね。」っていう家族であればいいんですけど、やっぱり自分の親のことでそういう現状を受け入れられないっていうケースもあります
そうするとやっぱりためらいとか。そこら辺はやっぱり病診連携では難しさを感じる時がありますね。

田中ヒロコ:病院から先生には内容とか情報は引き継ぎはされている。でも、実際患者さんに会うと、”おや?”と思うところがある・・・
それは発生率的には高いんですか?
スムースっていうことよりやっぱり”え?”っていうところの方が多いんですか?

松原先生:うーん、難しいね、それね。
逆に 100% うまくいってるケースってかなり診療に入りやすいっていう風に思うケースがほとんどで・・・でも逆に戸惑いを感じてらっしゃる方っていうのは 2.3 割くらいはいるんじゃないですかね・・・

田中ヒロコ:そうなんですね。

松原先生:だからその情報伝達っていうのは本来一つしかないはずなんですけど。それでもやっぱり人と接するっていうことは心を扱うっていうことでもあるし、嫌な事実に対して感情が発生するから、そういうのも全て理解した上で、診療所とかはやっていかなければいけないんじゃないかなというふうに思います。

田中ヒロコ:そうなんですね。新しく先生に会って、そこでまた新たに関係を築いていくっていう。

松原先生:そうですね。
例えばご家族が病院でネガティブな話をされて、その引継ぎを私たちが受けて、「こういう話でしたよね」って言うと”えっ”?て初めて聞いたかのような顔をされる。その時にまず大切なのは、患者さんとその家族のご性格とか考え方とか、そういうのを理解することがとても大切だけど、1 回じゃわかんないですよね。

田中ヒロコ:そうですよね。会ったその日っていうのはちょっと・・・

松原先生:退院前に多数の人が集まって、多数の病院の主治医の先生とか、在宅の主治医の先生とか、あとは訪問医療の看護師さんとかケアマネージャーとか。まあそういった人たちが多数集まって。あと病棟の看護師さんが集まって打ち合わせをして。そこで僕は患者さんご家族と会って話をすることもあるんだけれども・・・
どんな付き合いでもそうなんだけど、1 回では分かんない

田中ヒロ:分かんないです。
私も手術の説明とか行った時、姉と行って姉はずっとメモ取って、私は話を聞いて。父の手術の時とかですけど。やっぱりその後聞いた話の相違が発生しますね、家族でも
やっぱりそこで完璧に理解するとか。ご家族みんな舞い上がっちゃったり、とかご本人も大変なので難しいですし・・・
その中で病診連携で、また新たに先生に会うってなると、やっぱり状況は難しいですよね。

松原先生:情報伝達の難さっていうのはそれだけじゃなくてね。”人間は感情に反応してから解釈が変わる”っていうことも理解した上で関わっていかないと。患者さんの引き継ぎは難しいんじゃないかな?っていうのは最近感じてます。

田中ヒロコ:私たちにとっては初めての視点、見えないお話でした。本日もありがとうございました。